理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

柑皮症と私

薬剤師Y子です。

今日は、温州みかんの季節になると必ず思い出す出来事について書きたいと思います。

 

10年ほど前のこと。私は某ドラッグストアの薬剤師として都内で働いていました。

年末のある日、店内で何度か見かけたことのある上品な男性客が何度も私の近くを通り、私に話しかけるかどうか迷っている様子でした。

そういう時、私は「いらっしゃいませ。何か、お探しですか?」と、明るい感じで声をかけます。その時も当然のように、そうしました。

すると男性は意を決したように「実は、あなたの顔や手が黄色いので、私は心配なんです。黄疸ではないですか?」と、私の顔ではなく手を見ながら、一気に早口で言ったのです。

 

あ~、そうだったのね。ご心配おかけしちゃって申し訳ない!

私は大声で笑いたいのを我慢し、男性の目を真っ直ぐに見つめ、感謝を込めて丁寧に「いま私の皮膚が黄色いのは黄疸ではなく柑皮症なんです」と話し始めました。

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白目が黄色くないし、肝機能も他の検査データも正常であること。温州みかん、野菜ジュース、海苔、かぼちゃ、ニンジン等が好きで多く摂りがちな私は、体内でビタミンAに変化するβカロチン(カロテン、プロビタミンAとも呼ばれる)の血中濃度が高まって皮膚が黄色くなる「蜜柑や柑橘の柑、皮膚の皮、症状の症と書いて柑皮症」になることが何年かに一度あり、今回も「それなりに注意してたのに、なってしまった」こと。そして私の場合は温州みかんのシーズンが終われば自然に治ることを説明しました。 

すると男性は「そうですか。よかったなあ、安心しましたよ~。本当に、言ってみて良かったなあ」と言いながら、笑顔で去って行かれました。

その後まもなく私は転職し、その方に会う機会はなくなってしまいました。

 

柑皮症に関しては、この「豆知識」が分かりやすいです。

藤井寺市医師会 豆知識

 

こちら「レジデントノート」の記事では「白目がある意味」に関する記述が面白かったです。

www.yodosha.co.jp

  

お子さんの皮膚が黄色くて心配な方には、こちらの小児科医院のサイトをオススメしたいです。 

肌の色が黄色い:柑皮症(かんぴしょう)|こどもの病気|杢保小児科医院(小児科・アレルギー科・予防接種) 

 

私の話に戻ります。

みかんの季節、中高生の頃の私は1日に5個ぐらいの温州みかんを食べていましたが、当時は日焼け止めを塗る習慣も直射日光を避ける習慣もなくて肌が褐色だったし、徒歩で学校に通い、体育の時間が好きで、帰宅後は飼い犬と散歩する(田舎道を1時間ぐらい。しかも全体の半分くらいは走っていた)「運動量が多めの少女」だったため、血中の脂質量が低めで「脂溶性の黄色い色素の血中濃度が高くなって皮膚が黄色く見える」ことがなかったのだろうと思います。

 

高校卒業後、実家を出て「大人」になった薬学生の私は、夏も冬も日焼け止めを塗り、褐色の肌に別れを告げて「色白の人」になりました。また、犬と一緒に田舎道を走るという習慣がなくなったので運動量が減りました。

その頃から、父の末の妹である叔母が年末年始に会ったときなどに「ちょっとY子、なんか顔が変に黄色いけど大丈夫なの?」と言うようになりました。

確かに、しっかり白塗りしている叔母と比べれば、スッピンの私の皮膚は黄色く見えます。でも生意気盛りの薬学生としては、ど素人である叔母に言いがかりをつけられたままにしておくことなど出来るはずがなく、まだインターネットは使えなかったので大学の図書館で理論武装して、いつでも「これは大丈夫なの!」と答えられるようにしておきました。

 

その後、就職して、結婚もして、子供を産んで、子育てが終わってから働いていたドラッグストアで出会ったのが、冒頭に登場した上品な紳士です。あの方に即答できたのは、若き日の私をムッとさせた叔母さま、あなたのおかげです! 

 

新型コロナウイルス感染症治療 一条の光か!?

Mです。

 年末年始にかけての商売時に、何ともつらい状況だ。

 今朝、鳥越神社前で正月飾りの店を準備する人たちも、とても寒そうに見えた。日本海側に大雪をもたらしている寒気団のせいで、東京も確かに寒いのだが、それだけではない。これまでは、注連飾りを作っているおっちゃんに、若いお母さんが小さな子供を連れて話しかけている風景がよく見られたのに、今年は人通りが殆どない。しかも、みんながマスク顔だから、話しかけるという行為さえ減ってしまっている。そんな雰囲気が、ますます寒さを増強していると感じる。

 とにもかくにも、ウイルスの流行には、根本的には自衛しかない。

 地球上すべての動物は、太古の昔からウイルスと共存して繁栄してきた。時々、それまで共存していたかに見えるウイルスが変異して深刻な病気を生み出し、動物たちを大量死させる、というアクシデントが幾たびもあった。ただ、攻撃にさらされる動物側も、あとから見れば、そのウイルスに抵抗できた個体群がそのウイルスの遺伝子を取り込んでしまったり、抵抗するための武器を身につけたりして(免疫力)、しぶとく生き残ってきた。新型コロナだって、数年すれば世界中の人類が、そういうことあったよね、と顧みることになるのだろう。今現在は防備に必死だが、このまま行くはずはない。深刻になりすぎることなく、精神の安定を保つように心がけて、自分の免疫系の健康を維持することが大事だ。身体の抵抗力は、脳の健康に大きく左右される、ということは今や常識。イライラしていると免疫系の活性が下がることもはっきり判っている。

 人混みをなるべく避け、ちゃんとマスクしていればまずは安心なはず。怖がりすぎず、おおらかに振る舞うくらいの心構えが必要だと思う。

 どこもかしこもアルコール消毒を励行させるが、アルコール消毒で手指をガサガサにすることも避けた方が良い。皮膚表面を荒らしてヒビでも切れさせたら、その方が危険だ。健康な皮膚はウイルスが付いても、奴らを通してしまうことはない。もし手にウイルスが付いてきたって、目、鼻、口などの粘膜に触れさせなければなんと言うことはない。あとで手をちゃんと洗えば良いのだ。かく言うMは、アルコール消毒を見張られている店先でも、指先あたりにしかアルコールを吹いていない。丈夫な指の腹側だけ付ければ十分だと思っている。まんべんなく手をこすって塗り回すのは無駄だろう。ものに触れる部分だけ10秒程度アルコールにさらせばOKだと思っている。むしろ、こすらない。揮発を促進してももったいないから、手先に付いたアルコールが自然に飛ぶのを待ち、その間、なるべくモノに触れないようにしている。

 こんな状況のなか、英国で新型コロナウイルスに感染性の高い変種が現れたという怖いニュースが流れてきた。重症化とはリンクしていないらしいので、最悪の事態では無いが、罹りやすくなっているというだけでも、嫌な話だ。インフルエンザウイルスでよく話題になるウイルス表面の「ひっつき分子」(スパイクと呼ばれるタンパク突起)と同様のウイルス表面分子の変異らしい。要するに、これまで以上に細胞にひっつきやすくなった変異種で、そのために身体の中に入り込みやすい、という理屈。まさに、マスク必須、である。とにかく、吸い込まないに尽きる。鼻を出したマスク姿をよく見るけれど、ダメですね。鼻栓でもしているのなら問題ないけれど、そんなはずないし。

 その一方で、Natureにうれしい報告も挙がった。

 同じく英国のエジンバラ大グループが、新型コロナに感染して重症化した患者群2000人余りのサンプルを解析して、重症化しやすい遺伝子を5つ見いだせた、というのである。今朝、ラジオのNHKニュースで耳にして、早速ググってみた。

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  (NHKさんのニュース画像から転載)
 報告自体は、9月末に投稿されていて11月30日に受理されている。

 詳細は見ていないが、5つのなかに、ウイルスに対する抵抗性の一つとして知られているインターフェロン遺伝子と、同じくウイルス感染した細胞の処理に関わるチロシンキナーゼという細胞表面タンパクの遺伝子が含まれている。そして、インターフェロン遺伝子の活性が高いと重症化しにくく、チロシンキナーゼ活性が高くなる傾向の人は重症化しやすい、という調査結果とのこと。

 これは、実に理屈に合っている。

 インターフェロンが出てきてくれると、やはり、新型コロナウイルスに対する抵抗力になっている証左だ。その一方で、ウイルスが感染した細胞を免疫細胞が攻撃する際にそのターゲットをあぶり出す指標として機能するのが、チロシンキナーゼの仲間たち。これが細胞表面に多く出現すると、免疫攻撃軍は敵を見つけやすくなる。その結果、感染細胞駆除がはかどるのだが、その駆除作業が必要以上に激しくなると、強い炎症反応が引き起こされる事につながる。それが肺なら、呼吸困難の症状に進んでいくのは火を見るより明らか。まさに、この新型コロナ感染症の重症化パターンそのものだ。

 この二つだけでも、医療を施す側にとっては朗報である。

 インターフェロンはクスリにもなっているので、その種類と量を勘案しながらインターフェロン療法を探ることが出来る。

 チロシンキナーゼ活性を抑える薬剤もあるから、治療への応用も可能だ。こちらも、用量を検討しながら試みられるはず。
 重症化すると、人工呼吸器、それが難しくなるとECMOへ、と進めなくてはならない現状に、そこに行くまでに抑え込める、という光が見えるように思う。知恵を絞って具体的な治療策を見いだして欲しいと思う。

mRNAワクチンの実用第一弾 期待は高いが、慎重に!

Mです。

 英国で、独米共同創出のPfizer社製「対コロナワクチン」の接種が始まったと報じられた。

 理解力が高く、副反応への心構えと対応力のある医療従事者への先行投与だとのこと。
理詰めの実施に、さすが英国だと感じた。
 その中にあって、10日朝の報道で、早くも急激なアナフィラキシー様症状が2例発生したという情報も飛び込んだ。軽微な副反応も複数種確認されていて、その割合は多いもので数10%程度起こっているという。ただ、それらは長引くことなく解消されているそうだ。とはいえ、2例とはいえ、いわゆるアレルギー反応のうちでも激しく危険性の高いアナフィラキシー症状と思われる状態に至った例があることは、見逃すことのできない事実でもある。

 10日夕の報道で、日本が輸入決定している同ワクチンが入手された後は、新型コロナ感染による生命の危険性が高い高齢者を優先して、居住地域の病医院などで接種できるようにする、との政府方針が示された。エッと耳を疑った。
 まだまだ試験段階を抜けきれていないこのワクチンに対して、何の疑問も持たずに一般接種に突き進むのか?! 
 正直、どこまで本気なのかと疑いたくなるほど、本質がわかっていない国の中枢に、腹立たしさを超えてもはや呆れてしまう。

 報道でも何人かの専門家が問いに答えているが、今話題のこのワクチンは、従来型の原因ウイルスそのものを使ったものではなく、効果も副作用も未確定な部分が多いmRNAワクチンである。新型コロナウイルス遺伝子(DNA)の一部を翻訳して、ウイルス表面の特徴的なタンパク質を作るために用意したレシピ(mRNA)である。レシピだから、それを見たところで何なのかはわからない。これが投与されたヒトの細胞の中に取り込まれると、細胞の中に備わっているタンパク質製造装置に読み取られて、ウイルスのタンパク質がヒトの細胞の中で作られ、細胞の外に放出される。ヒトの細胞が作り出したウイルスのタンパク質が血中に入ると、それを見つけた免疫細胞たちが、こいつは悪いヤツだぞ!と騒ぎ出して、駆除する部隊を組織する。いわば、「免疫ガーディアンズ」の編成である。

 ※mRNAワクチンがどのように働くかについては、アメリカ化学学会のブログ記事がわかりやすく解説しているので、下記を参照していただきたい。
https://www.cas.org/ja/blog/covid-mrna-vaccine

 このサイトから拝借したのが下の図である。
細胞内外に赤い半ハート型の風船が付いたようなものがmRNAワクチンから作られたタンパク質を示している。

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 新型のmRNAワクチンは、何が有利で何が問題なのか、それが、今の世論を惑わせている根本なので、簡単に説明したい。
 
 従来型のワクチンは、①病原ウイルスそのものをいろいろな方法で増やしながら、病原性のないものを選ぶ、あるいは、②増やした病原ウイルスを薬剤処理して、ウイルスとしては働けないが姿形だけは元に近い「死に体ウイルス」を作る、の二つが主だった。つまり、ウイルス成分の塊そのものだから、それが接種されると、ヒトの免疫系は、単一の反応でなく、いくつものガーディアンズ部隊を呼び起こして対応するという点で優れている。ただ一方で、病原体そのものを使っているため、その遺伝情報がほかのウイルスに移って新しいウイルスを作ってしまう可能性もゼロではないし、病原性を失わせたと思っていたのに、体内で病原性を持ったウイルスに変化してしまう可能性もまた、ゼロではない。だから、従来型ワクチンが認められるまでには、その安全性確認に長い時間がかかってしまうのだ。

 それに比べると、先行しているmRNAワクチンは、接種してから病原性ワクチンになる可能性はゼロなので、安全性の面で明らかに有利である。開発始動から1年もたたずにワクチン誕生を宣言できたのは、この安全性の壁が薄かったからである。
 ただ、ヒトの免疫系から見たときは単純な一つのタンパク質だけへの反応を呼び起こしてくるだけなので、それがどれだけ強力なガーディアンズを養成できるかは未知だ。
 効きさえすれば何の問題もないのだが、果たしてどれくらいの効果があるかは、まだ判らないのである。
 上の図にもあるように、このワクチンは、身体に入れただけでは効果がない。細胞に取り込まれて、その中の製造工場を借りて製品であるウイルスタンパク質を作らせなければならなないからだ。そのための仕掛けが、図左上にあるLipid coat と記してある黄色い2重膜構造だ。医薬領域ではこのような薬物の入れ物のことをDDS(Drug Delivery System)と呼んでいて、身体に入れた薬物が効果的に働けるようにする仕掛けで、種類はいろいろある。この場合は、投与するmRNAが細胞に取り込まれるように、細胞の膜となじみやすい脂質2重膜構造を使っていて、その中にワクチン本体であるmRNAを閉じ込めている。この脂質膜粒子が細胞膜にくっつくと、膜融合が起こって中身が細胞のなかに入っていく。図の黄色いこぶの部分が、融合した膜ということだ。この膜組成や作り方が各企業のノウハウで、詳細は明らかにされないことが多い。
 実は、このDDSの組成が、人によってはアレルゲンになってしまうことが知られている。英国で発生したアナフィラキシー様反応の例も、その人がちょうどこのPfizer社製mRNAワクチンのDDS成分に対する反応性を持っていたと想像できる。
 安全に接種できる、とは言っても、やはりそこにはしっかりしたアフターケアがないと危ないのだ。
 英国の2例は、しっかりした医療機関で行われていたからアナフィラキシー様反応が出た時点で即応できたので良かったものの、一般医院で接種したときにこれが起こったらと思うと、背筋が寒くなる。

 

 先行mRNAワクチンを接種するなとは言わないが、現段階で、みんなに接種できるよ、と言うのは時期尚早だと思う。
 しっかりした医療機関で、先行ワクチンの性質を十分に理解している医療従事者に希望を確認したうえで接種し、直後からのモニタリングを確実に行える体制を整えるべきだ。3週間後に2回目の接種を必要とするマニュアルなのだから、少なくとも2ヶ月程度のモニタリングは必須で、2ヶ月後に抗体価の確認をするところまで行ってはじめて、このワクチンの効果判定が出来る。
 あくまでも、まだ試験段階なのだということを忘れてはいけない。

 国は、このようなことを最低限確認した上で一般への接種を始めるべきだ。
 拙速は取り返しの付かないトラブルを生む可能性がある。

 オリンピック前提で事を急いてはいけない!

マスク会食 その「新しい食事マナー」には反対です!

薬剤師Y子です。

今、「マスク会食」が話題になっていますね。

例えば、神奈川県公式の、この動画。

www.youtube.com

言いたいことは分かりますが、4人でテーブルを囲み「片方の耳からマスクが下がっている状態で飲み物や食べ物を口に運ぶ」ということを何度も繰り返す、この「新しい会食マナー」には、大いに問題があります。

 

自分の顔にしか接していないから「汚染されていない面」として取り扱うことが出来る「マスクの内側」を、「感染者がいた場合、おしゃべりの時に出る、ウイルスを含む飛沫」に何度も曝しているからです。

 

この動画では「会食の前に、マスクを新しいものに変えましょう」と言っていますから、会食が終わる頃には「マスクの外側と内側が、同程度に汚染されている状態」になり、何のためにマスクを着用しているのか、私には分かりません。

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もし、この4人に加えて、私、薬剤師Y子が会食に同席することになったら、動画開始から1分35秒後あたりで外したマスクを2つ折り(もちろん、顔に接していた面が内側)にし、持参したポケットティッシュ等で包んで、すぐ取り出せるバッグの中、ポケットの中などに入れておきます。

その状態で食べ物や飲み物を何度か口に運び(この間、目線は交わすけれど無言)、それからマスクを取り出して着用。口の中に入っている物を噛んで飲み込んだら、マスクをつけた状態で、しばらく会話を楽しみます。

「会食」ですから、これを何度か繰り返すことになるかも知れませんが、できるだけ「まとめて、黙って食べる」「ある程度まで食べ、どうしても途中で何か喋りたくなったら、マスクを着用して喋る」ことにしたいです。

 

つまり、「マスクを外し、その『内側』を守るように、そして直ぐ取り出せるように保管した状態で飲食する」ことと「マスクを着用して会話する」ことを最小限の回数だけ繰り返すのが、私にとっての「マスク会食」です。

片方の耳からマスクを下げて、同席者の口から出た飛沫が遅かれ早かれ『内側』にも到達するだろう、という状態で飲食するということは、私には出来ませんし、他の人にもオススメしたくないです!

 

これは感染リスクに直結する問題ですから、飲食ぬきで、マスクして、大いに議論したいですね。

極小コーナータップ バッタ屋で掘り出し物 

Mです。

 PC周りはタコ足配線が付き物。

 周辺機器がいくつもあるので、それらの電源取りのためにスイッチ付きOAタップ(いわゆるテーブルタップの上級品)がどうしても欠かせない。ひとつひとつは小電力なので、出来れば6個口とか8個口が欲しくなる。必要なコンセント数が決まってくると、タップ全体にひとつのスイッチではなくて、6口ならその各々に個別スイッチが付いた物が欲しくなる。そうすれば、プラグの抜き差しをせずにそれぞれの装置電源をON/OFF出来るようになるからだ。
 プリンター程度なら問題ないのだが、外付けのHDDマウンターなどを使っていると、マウンターのスイッチを切り忘れたままプラグを抜いてしまったと気づいたときに、思わず背筋が寒くなる。電源の入り切りの際に発生するサージ電流で、記憶装置にトラブルが起こることが十分考えられるからだ。
 人の手でプラグを抜いたり挿したりするとき、一瞬の動作のようでいて、プラグとコンセントの金属端では、ごく短時間の接触、非接触を何度も起こしている可能性がある。例えば、電気ストーブを使っていて、本体スイッチをONにしたままプラグを抜く、という操作をした経験がある方がいると思う。その時、抜く操作がちょっとゆっくりめだったり、噛みが固くて手こずったりしたとき、プラグを抜き取る瞬間、コンセントの中でパッと火花が飛ぶことがある。けっこう多くの人が経験していると思うのだが、この時、結構ヤバイ現象が起きている。通電状態の閉じた回路をいきなり切る、という動作によって、給電側、つまり家屋のコンセント側と電気器具のプラグとの金属端で、高電圧の電流が発生している。いわゆる、スパークが飛ぶ、というやつで、これがサージ電流とも呼ばれる現象だ。ミリセコンド単位の話なので、実際これで何か不都合が起こるということはまずない。ただ、器具の側がデジタル機器、特に記憶装置の時はそう簡単ではない。一瞬の高電圧が発生して、それで制御回路が吹っ飛ぶことさえある。そこまで行かなくとも、デジタルデータがごく一部で飛んでしまって、データエラーにつながることもあるのだ。かく言うMも、一度これをやってHDD一台をお釈迦にした経験がある。恥ずかしい限りだ。

 その反省もあって、ちょっと値は張るが、今使っているタップには、どれもスイッチが付いていて、周辺機器のプラグを抜き差しすることは行わないようにしている。そうしてからは、今のところ一度も不具合は起こしていない。

 そんなふうに、どうしても複数の機器をつながなくてはならなくなるPC周りのタップで困ることがひとつある。周辺機器の電源に多く使われているDCアダプターだ。普通のプラグ付き電線がアダプター本体からニョキッと出ている物は問題ないが、拳骨タイプのアダプター本体のかたまりからプラグ端子が2本出ているタイプがくせ者なのだ。このタイプ、タップに取り付けると、幅が大きいと隣のプラグが使えなくなってしまうのだ。しかたがないので、専用の中継電源ケーブルを作る、ということもあるが、それも結構面倒。 と、そんなとき、バッタ屋で極小コーナータップ、なるものを発見した。なんと100円だった。

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 ひとつのコンセントに挿して3口に変換する物が以前から知られているが(下画像参照)、発想としてはこれの変形バージョン。しかも、プラグ切片部分が回転するタイプで、スティック上の本体両側にコンセント穴が2箇所設けられている。これだと、タップに挿して外側に拳骨タイプをつけることになるので、タップ正面を塞ぐことがない。しかも、両側に拳骨を2個つけても大丈夫。3口変換コンセントなどではこうは行かない。

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 125V、15Aの表示で、ちゃんと安全マークも付いている。さらに、サージ電流防護も謳っている。中国製だが、設計製造元は日本メーカーとなっている。

 このタップから大電力のヒーターを使おうとする人はいないだろうから、やや華奢な見てくれだが、使い道さえ間違わなければ問題ない。
 そもそも、PC周辺機器に使うのだから、使う電力はたかが知れている。せいぜい2~3A程度しか流さないから、まったく問題はないのだ。

 さすがに小さい製品だから、完全はめ込み式のプラスチック容器になっていて分解は出来そうになかった。本来なら、バラして電線と端子をハンダ付けしてやりたいところだが、さすがにそれは諦めた。

 ごく些末な商品ではあるけれど、なかなかのアイデア商品だと思った。

 実際に使っていて、あったらいいなぁ、と思う物はよくある。そんな品物を商品にするという仕事は、結構面白いと思っている。ただ、それなりの資金も必要だから、ニーズの規模が問題なのだが・・・

 今回見つけた「極小コーナータップ」は、Mとしてなかなかの拾い物だと思っている。
 が、バッタ屋で見つけたということ自体、実際は商売として失敗作なのかも知れない。製品として目の付け所は良いけれど、さっぱり売れなかったからバッタ屋に出てきてしまった、ということなのかも知れないのだ。
 そうだとすれば、気の毒なことだ。
 
 秋葉原のジャンク屋巡りと同じで、バッタ屋での拾い物探しも、なかなかやめられそうにない。

ワクチン頼みで良いのか?  あらためて、日赤さんに期待します!

Mです。

 日本国内の新型コロナ感染者数が、既に累計で10万人を越えている。米国の1/100以下とはいえ、この半月程の動きを見れば、一気にその数が増加していく傾向にあるのは明らかだと思う。その一方で、予測も出来ない来年半ばのオリンピックについてどうこう言っているのは、いったいどういう了見なのか、と思う。
 部屋の中でボヤが起きて、いつの間にか小さな炎が立ち上がり、いまカーテンに燃え移ろうとしている。放って置いたら、間もなく、家全体が炎に包まれてしまう。
 そんな状況で、経済活動を停めては社会が成り立たなくなってしまう、という危機感を優先している場合だろうか。日本国内全域で、ということではない。火が燃え上がろうとしている地域を特定して、小さく、しかも確実に消火すべきなのは明らかだ。
 人の動きは止められないが、出来ることはいくらでもある、と思うのだ。
 国ではなく、それこそ地域ごとに知恵を絞っていくべきだと思う。地方自治とは、そのためにあるのではないのか?
 このままではマズイ、と思う自治体は、国の指示待ちではなく、独自に知事レベルで英断すべき段階だろう。

 その一方で、国は何をすべきか。

 ワクチン待ちで済む話ではない。
 先行しているmRNAワクチンも、どこまで効果があるのかは、実際に使ってみなくては判らない。現状で語られている効果は、あくまでも予備データでの話で、集団投与して本当に感染を防げるのかどうかは未知数である。

 その一方で、治療方法は、いまだに混沌とした状態だ。
 アビガンが効果的だ、というデータは確かに出ている。しかし、重症化阻止にある程度効果があるとしても、既に重症化してしまった場合はどうなのか。重症患者に対する適切な治療薬は、いまのところ見いだされていない状態だと思う。

 そんな状況の中、以前記したが、新型コロナ感染したヒトが体内で作った抗体成分を使う手法は、論理的に効果が期待できるのは明らかで、無視できないはずだ。

www.yakuzaishi-y-co.work

 新薬というような類ではないが、利用できるようになれば、重症化患者にも使えるはずだし、重症化の阻止にも当然役立つはずだ。しかも、新薬開発とは違い、既存の技術で作れるクスリが目の前にあるのだ。

日赤さんのロゴには、「人間を救うのは、人間だ」 と書いてある

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 既に10万人を越える患者が発生している状況は、見方を変えれば、この患者由来抗体治療薬の資源が、最低でも10万人分既に存在しているということになる。成分献血で200mlの血漿を分けてもらえば、20,000リットルの原料が手に入るのである。
 もし自分が新型コロナにかかったら、抗体価の上昇をモニターしてピークになったとき、成分献血血漿400mlを即提供いたします。

 ノウハウを持っていて、しかも、献血の受け皿として公認されている日本赤十字社なら、患者さんたちに協力を求めることは容易だし、集めた血液を安全確実にクスリにする事が出来るはずだ。

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 入院患者が溢れてしまって医療施設が疲弊するのを防ぐためには、どうしても有効な治療方法が欲しい。一助となる可能性のあるモノをみすみす見逃しておくのは、なんとしても惜しい。

 今一度、期待したい。
 日赤さん、一肌脱いではいかがですか!

画像合成ソフトの進化 驚異!? 

Mです。

 写真合成ソフトの進化が「ヤバイ」!!

 画像処理、音響処理ソフトなどをいくつも購入しているサイト(ソースネクストさん)から、画像合成ソフトの案内が来た。以前から何回か来ているが、だいぶ簡単になってしかも精度が上がったと記してあった。仕事上、マニュアルづくりなどで機器や車輌の写真を組み合わせ、貼り合わせて使っているが、時には、処理して合成写真にすることもある。
 マニュアルを作る対象の装置について、スイッチオンの状態しか撮っていなかったのでオフ状態のランプを色変換して作ってしまったり、人の手をはめ込んで操作手法を合成したりなど、いろいろやっている。その際、色調が違っていたりすると見た目がへんてこなので色調変換して違和感を無くしたり、はめ込んだ境界面が目立つのでぼかしを使って細工したりとか、結構苦労することもある。だから、合成ソフトなるものの「お知らせ」は、毎回気にしてチェックしていた。ただ、解説を見て、買う程のことはないな、と、これまでは無視していた。
 ところが、である。
 今回の紹介ソフトは(以前も紹介が来ていたものの改良版)、サンプル画像の内容を見て、大きく進歩したことが目に見えた。はめ込みした画像と、土台の画像の色調調整などがかなり巧妙になっていて、これまでのものだと若干違和感が残っていたのに、それが全く判らない。ごく自然に ” つながって ” しまっているのだ。

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 上の写真は動物の写真なので肖像権の問題もないだろうが、他にも紹介されているサンプル画像には、存在していない人を風景にはめ込んだものや、表情や角度が違っている同一人物の写真を切り張りして、正面を向いて微笑んでいる画像に作り替えたり、といったものがいくつも並んでいた。正直言って、普通に見ているだけでは全く違和感がない。100%オリジナル画像だと信じてしまうくらい、うまくできている。
 もちろん、それなりに時間をかけて作ったのだろうが、ここまで来ているなら、買いかな、と今回は思った。

 マニュアルなどの写真を、手持ちのものだけでいくらでも作り替えられそうな気がするからである。作業が忙しい中で写真撮りしながら進めていくとき、そのまま使える写真はそれほどない。だから仕方なく、不要な人を切り取って文字枠をはめ込んだり、いろいろと細工する必要がある。しかし、合成ソフトを使って撮り貯めてある画像から都合の良い画像を作り変えてしまえるのなら、そんな苦労はほとんど要らなくなってしまうのだ。場合によっては、時期も対象も違っている画像からパーツを切り出してきて思い通りの解説写真にしてしまうことさえ出来そうだ。
 技術の進歩、バンザ~~イ!!

 と、ここでちょっと怖くなった。
 ということは、有ること無いこと、いくらでも画像を加工して証拠写真を捏造することが出来る、ということなのか?

 スクープ記事中心の写真週刊誌が、大流行した時代がある。
 芸能人のスクープ映像を仕事ネタにしていたカメラマンが、たくさんいたはずだ。そして、その映像は真実だから価値があると見なされて、撮られた側の人権、プライバシーをほったらかしにして高値で売り買いされていたのだろう。良くも悪くも、真実の価値、だったからだ。
 それが、いくらでも「かんたん捏造」してしまえる環境が出来てしまったら、出回っている画像が真実かどうかは、もう判断しようがない。既にそうなってしまっている可能性がある今、ネット上の情報はもちろん、印刷物の画像でさえ、見ている者にその真偽を判断することはできない、ということになってしまう。

 この状況は、果たして許されるのだろうか、と考えてしまった。

 以前の合成ソフトは、改変後の画像を強拡大していくと、画素サイズが違っていればピッチの違いで境界線が判ったり、境界部分の明度がそこだけ少し違っていて、はめ込み輪郭が判ったりした。ところが、上述のサンプル画像は、拡大していっても貼り合わせたであろう輪郭を特定できなかった。それほど巧妙に調整してしまうのだろう。

 使いたい気分は大きいが、危険な動きに荷担しているかも知れない、という妙な後ろめたさも生まれている。

 世の中には、画像の真贋を見極めるプロ集団が、それを生業にしているという。そういう人たちには、それなりの特殊技術とツールがあるのだろう。ただ、真偽を明らかにして欲しければ、そういうプロに頼めばよいのだ、という考え方はどうかと思う。

 技術を進歩させるのなら、一方で生まれてくるデメリット、つまりこの場合は、フェイク画像を判別する手段も同時並行で用意しなくてはいけない。例えば、コピー機にかけるとCOPYと浮き出てくる特殊印刷のように、フェイクディテクター・アプリを付属して販売するのである。このアプリで画像を取り込むと、合成が行われれているかどうかチェックしてくれるとか、このアプリをインストールしておくと、PC上で画像コピーしたとき、合成画像ならその境界がはっきり見えてくる仕掛けとか、である。

 フェイクをギャグにして面白おかしくしているだけなら、笑って観ていられる。しかし、フェイクであることが判らなくなったとき、人は何を信用すればよいのか。

 笑える笑えないの問題ではない。

 報道されていることでさえ、どこまでが真実なのか判断できなくなったとき、文化的手法は全て、その信用を失ってしまう。

 ネットはほとんどウソだ、と言う人がいる。

 そんなはずはないが、そう言いきれない部分も、確かにある。

 これからは、真偽を見極める手法、ツールが、いろいろな分野で最先端のビジネスアイテムになっていくかも知れない。


 コワイ世界である。