理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

ねんきん のお話

Mです。

ねんきん って音で聞いて何を連想しますか?
Mは、じつは ”なまもの屋”(Biologist  笑々)なのです。
今回は、その世界のお話、粘菌です。

日本中のみんながとても気になっている年金、とは関係ありません。悪しからず。

神奈川への仕事帰りに横浜でアルファベット入りナンバーの存在を確認した日、その3時間ほど前、打ち合わせで訪れていたサザンの聖地で、冬にはめずらしいものを見つけたのです。

先方に若干はやく着いてしまい、時間つぶしに工場周辺の畑周りをデジカメ片手に散策。半分雲に隠れた富士山を眺めながらウロウロしていると、立ち枯れたトウモロコシに囲まれた日だまりになにやら異様な色模様の土塊があるのに気付いた。

ちょうど砲丸投げの鉄球を畑の土にいくつもたたき込んだようにツルン&ボコボコしている黒っぽい土の表面に、べったりと色が着いた斑紋がある。

むかし流行ったことがあるスライムっていう、ねっとりベタベタのかたまりをご存じだろうか。それをちぎって薄くのばしたようにしたものが丸い土塊に貼り付いている感じだ。ぐっと近づいてみてみると、なんと粘菌のかたまりだと判った。冬の寒い時期に、しかも森の中でもないところで目にするのは奇跡的。

どうやら、堆肥を作っている建家の壁が北側に立ちふさがり、立ち枯れたトウモロコシの林がぐるりと取り囲んでいるため、風が当たらずしかも堆肥の熱で地べたが温かいせいだろう。温度と湿度がうまい具合に整ってしまっているようだった。しかも、よく見ると黒くて丸いでこぼこは堆肥のかたまりだと判った。

なあるほど、堆肥だから表面に微生物やカビ、キノコなんぞが集まり、それをえさにする粘菌(変形菌)の集合体が集まってきたのだろう。冬の寒い時期に活動するのはあり得ないと思っていたけれど、条件さえ揃えばこんなこともあるのだ。うす緑、黄色、オレンジ色がかった茶色のちょっと見グロくてそれでいて可愛い粘菌集合体。バシバシと写真に収めてしまった。

↓ いろんな生き物を知るのは、面白いです。

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そういえば、たて続けに粘菌がらみで日本の研究者がイグノーベル賞を取ったことがあった。飢餓状態の粘菌をかたまりにして一箇所に置いておき、周囲にえさを点在させておくと、彼ら(粘菌)がそのえさを目指して移動する。そのルートをトレースすると、非常に効率の良いネットワークになったのだというものだった。指令系統も情報網も持たない個別の単細胞生物が、集団として効率よく分散していったのは”何”がそうさせたのか、実に興味深い。それより前に、たしか迷路の入り口に粘菌を置いて、出口にえさを置いたら、あまり無駄な経路をロスすることなくえさに辿り着いたという研究もあった。いずれも、速度は当然のことゆっくり~ゆっくり~なのだけれど、結果を見ると驚異の現象だと思う。

 

これって、インターネット網を介してお休みしている世界中のネットパソコンを上手く使い回すと、スパコンを超える仕事が簡単にできるのだ、というお話とどこか似ている気がする。クラウドコンピューティングビッグデータを集積する仕組みも、俯瞰してみるとまさに粘菌たちのネットワークではないか。効率一辺倒で組み上げているかに見える人間社会のいろいろな技術も、時間とスケールを変えてみると、何のことはない、億年の単位の昔からあった生き物たちの仕組みをカッコ良く真似てまとめただけだったりして。


のろま、とか、ぐずとか、役に立たない、なんて言われているヒトが、実はスゴイ能力を発揮して独創的な芸術作品を生み出すことがよくあるけれど、生き物たちの中では、そんなこと当たり前なのです。


さかなくん、じゃあないけれど、ギョギョッとする能力を持つ奴らがゴマンといる。

それが生物界だってこと、チョットわかって欲しいと思うのでした。