理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

裏表のないヤツ

Mです。

そこそこ長く生きているから、いろんな人間を観てきた。パーソナルな関係、オフィシャルな関係、どちらの場合でも気の合わない相手はいるものだ。それでもどうにかつきあわなくてはならない場合もあるから、人間社会はめんどくさい。
犬や猫なら嫌いなら威嚇して追い払うか、とっとと立ち去ればすむのだが、人の社会はそうもいかない。

どんな相手がいちばん嫌かといえば、やはりダントツは裏表のある相手。時と場合によって言うことが180度変わる人が、ちゃんといるのだ。正直、殺人が許されるならたたき殺してやりたいと思った人間が片手ほどいる。どうにか犯罪者にならずにすんでいるのは幸運なことだと思う。

が、世の中には、ちゃんと善が衣をまとっているような人もいるのだから不思議だ。一方、悪しかないという人間は、本当のところはイナイのではないか、と希望的な考えも持ってしまうのは、これでも人間を捨てていないからだと思う。

はてさて、自分は裏表、どうなのだろう。裏ばっかりだったりして。

と言ってみて思った。裏だけの人間は、それはそれで正直者じゃないか。だって裏切りようがない。最初から裏なんだもの。いつもちょっと斜に構えて皮肉な目でしかものを言わない、っていうのが裏だけの人間なら、それはそれでつきあいやすいというものだ。
かえって、いつも表だけ、つまり、いつでも善良で素直、なんて人の方が相手するのは疲れるかも知れない。

と馬鹿なことばかり連ねてしまったが、ここで蘊蓄ネタになることをひとつ。

植物では、裏しかない奴らがあるって、ご存じだろうか。
とは言っても、植物のどこが裏だけかというと、葉っぱのことである。ほかの部位には表も裏もないから。

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葉っぱが裏しかない、と言われてどんな構造が浮かぶか。
やはりそれは筒しかない。つまり円筒状の葉っぱ。
となれば、ネギです。

 

ネギの葉は、発生段階で巻いた状態のまま表面を内側にして閉じてしまう。そのまま癒合して成長するだけでなく、内側になった表面の細胞自体が死んでなくなってしまう。いわゆる、遺伝子で予定づけられたプログラム死だ。ネギの青い(緑の)部分が葉だから、そこを切った時を思い出してほしい。裏側にはゼリーのような粘液状のものがついているが、あれは表面の細胞ではなくてむしろ中間の充填物、サボテンなどの葉の中身に相当すると考えるとわかりやすい。

ネギは世の中を裏世界で渡り歩いている任侠者なのである。

 ↓ やっぱ、この時期はネギたっぷりのすき焼きでしょう! 

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ほかの植物の葉はどれも裏表がありそうだが、じつはもう一つ、なじみの深い植物にそれは居る。
アヤメである。

  ↓ 3方に垂れる萼片の基部が網目状の模様なのが一つ目のアヤメ。

    カキツバタ(二つ目)は白い。

    ちなみにショウブは黄色いものが多い。

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アヤメの葉は、よく間違えられるカキツバタに比べると細めでちょっと肉厚。とがっていて細身の剣のような形状だ。そしてよく見てみると、裏表がない。表を向いているように見える側も、反対側もどちらも中央が平らかちょっと出っ張っているようにさえ見える。じつは、この葉の場合は最初から表面がなく、両方裏面という特殊形態のまま扁平化しているのだということが、研究でわかっている。両方裏面ということは、普通は葉の裏面だけにある気孔(呼吸のための構造)がどちらの面にもあるわけだ。日光を直接受けて光合成する表面が無いことの不合理はないのだろうかと心配になってしまうが、何か上手い仕組みを持っているのだろう。

表を見せないで世の中を渡る。
なんだか、座頭市のようだ。

あれっ、それもチョットちがうかな?