Mです。
ごく希だけれど、それまで動いていたPCが突然ダウンすることがある。あるいは、一度シャットダウンした後、再起動したら動かなかった、ということもある。停電のアウトは幾度も経験しているが、部屋の明かりは灯いている。明らかにPCの中で何か起こったのだ。
これまで経験した突然ダウンは3種類。①ごく近くに落ちた雷の誘電でHDDが煙を噴いた。②作業中に画面がしばらくフリーズして、そのままブラックアウト。バラしてみたら、原因はCPUの焼損。夏場の放熱不足でした。③最近画面がふらつく、と思っていたらプツンと消えた。PCのファンも停止。電源が入らなくなっている。明らかに電源ダウンです。
このうち①はどうしようもない悲劇で、あきらめるしかない。②は、酷使するマシンなら前もってCPUの冷却に留意しておくべきで、自己責任。部材として、これがいちばん高く付くかも知れないのだから、オーバースペック覚悟で考えておくべきかも知れない。そして、件数として一番多いのが③だった。これは、防ぎようがないようでいて、それなりに前兆もあるから、よく注意していれば予防できるかも知れない。また、①と②にくらべれば、電源をバラして修理もできるし、交換パーツとしてそれほど高価でもないから対応しやすいと思う。
ということで、今回は、PC電源トラブルの対応法について。
使っているのはデスクトップばかりだから、電源というとほとんどのタワー型ケースのユニット。後ろから見ると一番上にはめ込まれているパンチ穴の鉄板から中がのぞける部材、それが電源ユニットである。電源ケーブルを差し込んでいるので、誰でもわかるはず。ほとんどがATXタイプという規格モノ。スリムタワー型はmicroATXといって、こちらも規格モノだが、ブランドモノはケースが特殊で電源ユニットも特殊形態の時があるので、残念ながらATXほど融通が利かない。
この電源ユニット、同じ位置にねじ穴が付いている規格モノで、すこぶる互換性が良い。スリムタワーの場合は、ただし、供給電力が様々で、2~300Wクラスから1000Wクラスまで様々ある。通常のデスクトップ型だと、400~600Wあたりを載せていることが多いのではないかと思う。値段も3000円台から3万円台まで多種多様で、何がそんなに差をもたらしているのか仕様を眺めたくらいではよくわからない。
デスクトップPCのハコを開けて中を見たことがある方ならわかるだろうが、電源ユニットからはごついケーブルが何本も出ていて、赤、黄、黒、橙、の電線が束になって配線されている。なかなか手を出しにくい様子で、よほど好奇心が強い人でないと、いじろうとは思わない対象だ。
が、実はとても単純で、ユニットに引き込んだ常用100V(交流)を、トランスで電圧変換し、さらに直流変換して主に12V、5V、3.3Vで各種のパーツに電源供給している、という変電所である。ちなみに、上述の色分けは、黒がGround(アース)で、この電位に対して赤;+5V、黄;+12V、橙;+3.3Vで、これ以外の色は特殊用途になっている。
これらの電源系のうちでいちばん電力的に多く使われるのが12V系で、マシンのパーツに高機能グラフィックボードを使っている方は、12V系だけで500W超必要になることがある。とはいえ、普通に使っている実務PCなら、トータル500Wクラスがあれば十分だろう。
さてこの電源ユニット、肝はトランスで、交流100Vを変換しているが、御本家トランス自体はまず壊れることはないと思って良い。よほど粗悪な作りのトランスならいざ知らず、今使われているトランスは、皮膜も劣化しにくいので経年劣化でコイルが焼ける、なんてことは経験がない。ならば、電源トラブルを起こしているのはどこなのか?
その答えは、①ヒューズ切れ、と②コンデンサ劣化、と思ってもらって良い。
経験上、ヒューズ切れが7割で、コンデンサの劣化が3割と思っている。
①ヒューズ切れ
ヒューズは、言わずと知れた、安全装置である。家庭で言えばブレーカーに相当する。上記したように、最も多く使われる12V系に多くのパーツをぶら下げていると、それらを並行して使っているときにはMax近くまで電源供給を受けていることもあるので容量オーバーで切れてしまう、ということがあり得る。また、チリやホコリが溜まりやすいユニット内は、湿気の多い時期やじめじめした部屋の中ではゴミを介したショートが起きやすい。そんなことが原因で瞬時にヒューズが切れてしまう、ということはあるのだ。
ところがこのヒューズ、ちょっと見ではわかりにくいことが多い。以前の電源では、ヒューズソケットが基板に設けてあってそこにガラス管ヒューズがはめ込んであったからすぐにそれとわかったが、最近のユニットではガラス管ヒューズはまずお目にかからない。ほとんどがセラミック管ヒューズで、それがモロに見えているなら”白い筒”として認識できるが、周りを熱収縮チューブで覆って保護しているのでどこにあるか見えにくいのである。
先だって修理した電源でも、外部電源コネクタの下に隠すように設置されていて、見つけるのにだいぶ苦労した。付いているのは外部電源を取り込む場所近くの基板上だから、あたりをつけてよく探すしかない。見つけたら、テスターで両端をあたり導通しているかどうか見れば良い。抵抗値Maxなら切れているとすぐわかる。わかったら半田ゴテの出番で、そいつを外して規格を確認し、交換部材を手に入れて付け替えればそれでOK。
やることは単純だし、多分これでユニットは復活する。もちろん、ゴミでショートしたようなユニットだと、どこか焼けているところがほかにあるのかも知れないから、ゴミ掃除した後でシッカリチェックする必要があるのは当然。おかしなところがなければまず間違いなく復活するだろう。
下は、楽天市場で売り上げ一位の簡単セットだとのこと。入門用には至れり尽くせりかも知れない。使い慣れると、半分以上のツールがいらない、とわかるかも知れないが(笑)。
②コンデンサ劣化(ときどきパンク)
コンデンサと言ってもいくつもの種類があるが、PC周りで劣化がいちばん起こるのは筒型の電解コンデンサである。PCパーツの親方であるマザーボードにもたくさんタケノコのように付いているが、電源ユニットにも数十本立っている。規格も様々だが、頭に十時の溝が入ったモノが多く、見てすぐわかる。それらをよく見ていくと、十字の頭が腫れていたり、ひどいときは亀裂が入って液漏れ&乾固しているのを発見することがある。当然、そいつらがトラブルの元凶で、そんな輩を見つけたら同規格のコンデンサを入手して交換だ。
十字の溝は、劣化が起こると内圧が上がって膨れるのを見やすくしているらしい。正常だと真っ平らの頭が少し膨らんで見えたら、劣化が進んでいるわけだから予防策としての交換もアリだ。
ネットで同規格のコンデンサを求めるも良いし、アキバ通なら駅舎下の電材屋さんが並ぶ狭い通路で見つけるのもおもしろい。電材屋さんは規格を言うだけで、「何に使うの?オーディオ?PC? 」と聞いてくれる。用途によってお勧めがあるのだという。規格は同じでも、オーディオ向けは放出電圧振れ幅が少ない厳選モノ、PCには温度耐性の高いモノ、と区別しなくてはダメだと教わった。
何のことはない、おかしいなと思ったコンデンサを交換するだけで、ユニットは元通りになる。
パソコン修理をうたう店に持ち込めば、単純な電源トラブルでもソコソコの値段になるだろう。なにしろ、言い値でユニット全交換になるに違いないのだから。
PCがおかしくなったら、知り合いの半田ゴテが好きな人に相談してみるのが最初ではないだろうか。実のところ、高尚な作業をしてくれるPCではあっても、エンストしてしまう原因は、超アナログな世界なのだから。