理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

外遊びに切り傷は つきもの

Mです。

完全アウトドア派の幼少期を過ごしたMの両手には、手の甲だけでも左右に各10箇所ほど、シコリになった小さな傷跡がある。掌にもあるが、そちらはあまり目立たない。多くは、魚取り、虫取り、藪漕ぎなどの際に草や木でつけた傷で、どれも2~3日で治ってしまったものばかりだから大したことではなかったのだが、ちゃんと跡になって残っているということは、その場所で肉芽が増殖して傷を修復し、若干線維化して周囲とは違う構造になってしまっている、ということだ。勲章なんて言わないが、ちゃんと遊んだぞ、という証明ではある。

 

ところで、バンドエイドという名称が傷に貼る「ガーゼ付き絆創膏」の代名詞になってしまったのはいつからだろう。それらを初めて使ったのは、中学生になってからだったと記憶している。ということは、昭和40年代半ば、まさに高度成長期まっただ中の頃だった。
ただ、使ったことはあるものの、あまり良い印象はなかった。水に濡れるとヒリヒリ痛いし、砂がつくと剥がれてしまう。だから、バンドエイド以外にも複数のゾロゾロが出てきたが、どれもさほど魅力的ではなかった。結局は、布製の「ガーゼなし絆創膏」でしっかりと傷を固定し、水がしみこまないよう押さえ込んでしまう方が良かった。そうしておけば、傷がないのと同じように手指が使えたから。

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今では頻繁に使っているガーゼ付き絆創膏(超ゾロゾロ品で十分)は、内面がキレイだからという理由以外、メリットはない。指なんかなら、傷にあてて強めに巻いてしまう。手の甲などで巻けないときは「多方向にずらして重ね張りしてから、スポーツ用のテーピングテープでぐるぐる巻いて押さえる」なんてことをしている。結局、使っている機能は清潔なガーゼ面と傷を押さえるテーピング力。それで、かなり深めの傷まで対応してしまえる。

 

今はそんな風にしているが、こども時分の外での傷対応は、なかなかワイルドだった。
だいたい、ススキで切ったり割れた笹竹で切ったりして血が出たとき、対応できるようなメディカル・ツールは何も持っていない。

まずやったのは傷を吸って少し血を出し、次に手首をぎゅっと握って指先側にずらして傷口から血を溢れさせること。誰かに教わったのかも知れないが、気がつくといつもそうしていた。ボタボタと血が出てきたところで圧迫をやめ、植物頼みの療法を採用。笹や竹の葉があるところなら若いきれいな葉をとって傷にぺったりと貼り付け、しばらく押さえていた。

 

うまいことに地べたにチドメグサがあるときは、テラテラした大きめの葉っぱをとって指でつぶして傷にあて、次につぶしていないテラテラの葉オモテを貼り付けて押さえていた。チドメグサの効力は抜群で、数分で血が止まってしまうのは子供心にスゴイと思った。チドメグサはそこいら中にあって、誰から教えられたのかも全く覚えていないが、その名が効力を表していたから、記憶はしっかりしていて、まさにスーパーマン的存在だった。難を言えば、どこにでもあったとはいえ、新鮮な葉が必要だったので、取り置きができなかったことだ。

  ↓ チドメグサ

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そんな自己修復力の補助、という点で、野山に生えている草が重要な役割を果たしてくれることは、いくつか覚えておいて良いのだと思う。

さっき挙げたチドメグサは、汁に血止め効果があると大昔から判っていたのでこの名前がついている。汁をつけなくとも、表面のテラテラした部分が切り傷からにじみ出させた血にぺたっと張り付いて血が固まるのを促してくれる効果もなかなかだった。塞いでくれている感だけで、なんだか傷が治ったような気がしたものである。

 

笹の葉も殺菌効果を持っていることが古くから知られていて、それが笹団子や粽(ちまき)などの食品への応用につながっている。

 

そしてもう一つ、そこいら中にあって重宝だったのがドクダミ。これは、東京のような都会でも、ちょっとした土のある場所に群生してしまうなど、その生命力たるや半端ではない。
ドクダミはやはり殺菌力が強く(ニオイもそれを感じさせる)、切り傷に揉んだドクダミを当ててから絆創膏で塞ぐ、ということをよくやった。
こども時分に家人がよくやったのは、腫れ物が出来たとき、ドクダミを新聞紙に固く包んで火にくべ、紙が燃えた後の塊からドロドロになったドクダミを取り出しておできにポテッとのせて絆創膏で塞ぐ、という抗炎症~排膿治療。これがことのほかよく効いて、翌日には腫れ物のてっぺんがぽっかり口を開けて膿が出てしまい、二日もすれば痛くなくなる、といった具合だった。今のように抗生剤軟膏などなかった当時は、殺菌力の高いドクダミは十薬という名が示すように、ちゃんとした薬草だったのである。外用、内服両刀遣いのドクダミは、どくだみ茶などの形でいまでも広く愛用されている。 

下の図鑑は、だいわ文庫さんの写真を使わせて貰った。こんな身近な野草の図鑑があると、だだの「くさ」だったものがいきなり固有名詞で語り出してきて、それはそれは楽しいことになる。

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野草を使った健康法がいろんな本になって出回っているのも事実で、それを否定するつもりは全くない。が、かといって信奉するつもりもない。同じように、何とか茶、の名称で高血圧やら利尿やら、健康増進に効くという云われ方をする野の草たちの実力は、あまた目にできる。

野の草に有用なものがあるのは百も承知だが、それに頼り切る、という気持ちには賛成できないし、ちゃんと考えてからにしてもらいたいと思う。
ただその一方で、雑草としてしか見ていない草たちが、かなりの実力者だと云うことを知識として持っておくことは大事だと思っている。
そして、手に傷を作るくらいの野遊びを子供達にしてもらいたいと思うのだ。

チドメグサ、すごいんだよ!