理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

PCケースは 穴開け自在!

 

Mです。

Note PCの夏場対策にゲタを履かせることをお勧めした。

その際、主に使っているデスクトップPCは、排熱が容易だからと記した。とはいえ、平気で外気温が40℃近くになってしまう昨今では、エアコンをつけても室温が30℃近くなるのは当たり前だから、風さえ通していれば大丈夫と、安心してもいられない。

BTO-PCショップなどでは、ゲーミングPCが主だから、ケースもなかなかに凝っていて、LEDで光るファンを使ってサイドパネルからその光が見えるとか、サイドパネル自体を透明にしているものさえある。そんな目立ちたがりに見えるマシンだが、実をいうと大いに工夫されているのだ。排熱量が通常のオフィスPCに比べて何倍も大きいことがあるから、目立っているだけではなくて実質の機能として排熱を追求したマシンでもある。

光っているファンは、たいてい大口径で、ケース内の温度に応じて回転数を変えながら熱い空気をケース背面から吐き出している。ゲームの命でもあるグラフィックボードも分厚いファン内蔵の代物だから、そこからの排熱も大きい。心臓部であり中枢脳でもあるCPUも高性能品で排熱も大きいから、そのクーリングファンもデカいことが多い。さらに、クーラーが付いていない発熱体として一番厄介なメモリーモジュールからも、大量の熱が放散されている。

要するに、ケース内は熱源の宝庫なのである。
その熱を、機能的に分散しながら排出していく「空気の流れ」を上手く工夫しているのが、良くできたゲーミングPCだ、ということになる。

そんなゲーミングPCのサイドパネルを開けると、思った以上に空間が上手く配置されていることに気付く。

一般のオフィスPCあたりだと、上に付いている電源ユニットから出た多くの電源線が「つなげばいいや」的に、各パーツに向かい、申し訳程度に結束バンドなどで何カ所かくくられている程度だ。バラバラよりは体裁がよいものの、その配線のかたまりは明らかに空気の流れを邪魔していて、CPUクーラーの横を半ば塞いでいたり、CPUとメモリースロットの間を電源線の束が遮っていて、メモリーの発熱が行き場を失っていることが多い。

そんな姿と比べると、ゲーミングPCの多くは、電源線を行き先毎に分別して効率的に配置している。5インチスロットや3.5インチスロットの壁沿いに這わせて引き回したり、マザーボードの縁より外側を巡らせてコネクタ直近まで持っていくなどしている。とにかく、マザーボード上の空間を出来る限り温存しようと工夫していることがわかる。

下の写真はヘラマンタイトン社という結束バンドの有名メーカーから転載させて貰った写真だが、こんなバンドでケーブルどうしをまとめてはケースの構造体に這わせて固定して空気の流れを妨げないように工夫しているのだ。

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そこに持ってきて、背面の排熱パネルには、100mm角の大型ファンを設置するなどして、ケース内の熱はここから出す、と流路を確立させている。そのおかげで、各所で発する熱が付近に留まることなく、空間に散っていって大型ファンに収束していく、という姿なのだ。


では、オフィスPCでもそうすれば良いではないか、ということになるが、実際はそう上手くいかない。なぜなら、まずケースのサイズが小さいことが多いから。
Mは手づくりPCをいくつもつくってきているが、そのケースは、500円でバッタ売りされているものなどがほとんどで、あまり完成度は高くない。サイズもミドルケースがほとんど。大きなものも使っているが、大きいと設置場所に難ありだし、依頼主の要望でも、あまり大きくないものにして欲しいとなることが多いのだ。大きなケースならいくらでも線の引き回しに工夫も出来るが、ミドルケース程度だと配線の物理量がそれを許さない。

そこで、苦肉の策として行っているのがケースの穴開けである。

デスクトップのケース内を見回すと、マザーボードの部品配置はどれも似かよっているので、ケースの前方にHDのブロック、次にメモリーのブロック、CPUブロックとグラボブロック、といった3部構成がほとんど。電源は後部上方にあるのが普通だから、これらのブロックの熱を上手く逃がすには、ケース後部上方の電源下エリアが一番効率がよいことになる。事実、多くのケースで、電源下の壁にパンチ穴を空けてケース・ファンが取り付けられるようにしてある。サイズは80mm角程度が多い。
ところが、である。空気の流れが中央から後部上方に向かう、というのはよいとして、その空気はどこから入ってくるのか? そんなの考えたことがない、という方がほとんどだろう。実は、それは前面パネル裏からなのである。

前面パネルはプラスチック製でデザイン性に富んだ代物だが、実は鉄製ケースの前方に設けたいくつかの爪穴にはめ込んでいる。そして、そのケース前面下方にパンチ穴が空いていてそこから空気が吸い込まれるようになっていることが多い。HDを何台も重ねて取り付けるのも前面下方が多いから、熱を発するアイテムの一つであるHDを冷やすためにも、前面から空気を取り入れる必要があるのだ。ときどき、そのパンチ穴内側のスペースに60mm程度のファンがつけられるようにしてあるケースもある。良い発想だ。ジャンク屋でケースを探すときはまずこの場所にファンが付けられるかどうかを観るのがMの習慣になっている。

ところがここで大きな問題が。

前面パネルの下方から空気が入ってくる、とは言っても、とても大量の空気がそこから入ってくることは難しい。サイドパネルにたくさんの小さなパンチ穴を空けているケースもあることから、作っている側も排気量に見合った吸気確保が難しいことを知っているのである。

そこでMは、排熱力アップと吸気性アップのために、二つのことを行っている。

①既成のケースファン取り付け部のパンチ穴を大穴にしてしまう。
これは、ファンの取り付け穴より内側にあるパンチ穴の最外部を、ニッパーでバキバキ切り取っていって、ただの大きな丸穴にしてしまうのである。もちろん、切り取った縁は、ヤスリでバリとりしておく。こうすると、ファンの排風力が格段にアップする。何しろ、パンチ穴があるとはいっても、実は穴は全面積の30%程度でしかなく、言い換えれば70%は壁なのだから。

②前面下方部に大穴を開ける。
これも発想は同じで、空気をなるべく大きな口から入れてやるということ。ファン設置が出来る場合は、①と同じようにファンの内径に合わせてパンチ穴をつなげて切ってしまう。小さな隙間しかないときは、思い切って、矩体がゆがまない程度に縁から20mm程度残して鉄鋸で四角い穴を空けてしまう。HDを多段設置できるような場合は、そのHDスペース分を穴にしてしまう、という発想。
この二つを実施すると、ミドルケースであっても空気の流れは前から後ろへとだいぶマシになるのだ。

せっかくだから、こんな工夫をしたときは内部の電源線を出来るだけ左右の壁沿いに分けて、結束バンドと両面テープ付き固定具で留めてしまう。

それでもどうしてもケース内が狭くて空気が上手く流れない、なんていうとき、強硬手段に出てサイドパネルに四角い穴を空けてしまい、下のような100mmファンを付けてしまうこともある。中央やや前に付けるとメモリースロットあたりにも風を直接送れるので都合がよいのだ。ちなみに、この手の12Vファンをつなぐマザーボードコネクタが余っていないときは、線を切ってHDドライブの給電端子に繋ぎ込んだり、その手の細工用に売られている変換コネクタを使ったりしている。電力的にはごく小さいので、電源負担になるようなものではない。それでも、横っ腹から風が入るとCPUクーラー、メモリーあたりの排熱はグンと効率が良くなるのだ。

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こんなことをしていると、やはり、デスクトップがいじり甲斐があるなあ、と思うのである。
CPU温度をモニターできるフリーソフトがいくつも出ているので、そんなものをインストールしておくと、自分の工夫でどれだけの冷却効果が出せているかを確かめられるので楽しい。
工夫前に、ガンガン使っているときのCPU温度68℃くらいだったマシンが、同じように使っていても55℃くらいまでしか上がっていなかったのを観たときは、小躍りしてしまった。