理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

ステレオグラム ; 立体視できますか?

Mです。

 だいぶ前に、立体視が目の疲れを癒やすのに良い、とか言われて、隠し絵絵本のようなものが流行ったことがあった。細かな模様がびっしりと並んだ絵を、一点を見ずに両眼で水平に見たり、あるいは寄り目のようにして視野をずらして画像を水平にずらしていくと、中央で合成された立体画像が見えてくる、というもの。前者を水平視、後者を交差視と区別しているが、Mは後者は得意だが前者は認識できていない。人によって、視野のずらし方に得手不得手があるようだ。

 下は、Wikiさんから拝借したユリの画像。立体視できますか?

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 ステレオグラムとして紹介されているものには、ちょっとだけずれた2枚の画像が並べられているものと、一枚の画像のなかに繰り返しのある写真や文様などがびっしり並んでいるものがある。上の写真は前者で、とても分かりやすいタイプだ。視線をずらして作る中央の画像は、奥行きのあるユリの姿である。

 繰り返し文様などの一枚画像では、中央に形成される画像が、前後にずれた段差や斜面のある画像になったり、蝶の形にへこんだ画になったり、様々な工夫がされていてなかなか面白いものだった。ふつうに見てしまうと平面画像なのだが、微妙にずれた画像を提示することで、そのズレが立体方向に並ぶという現象だ。

 Mはどちらかというと上のユリの画像のような2枚並列が好きだ。実際の写真が微細構造まで見えるように感じるので、興味深いからだ。
 
 いまなら、専用ゴーグルをかけて3Dムービーを見るのも珍しくないが、平面の画像が自分の目で立体に変化して見えてくるのは、他力本願で見えてしまうのとはたいぶ趣が違う。見せられている、のではなくて、見ようとして見るのだから、立体に見えたときの驚きが違うのだ。

 ステレオグラムという名前がついているそれらの画像は、動物の目がもともと行っている左右の目の視差によって対象物の立体感を脳内で合成するプロセスをうまく使ったものだ。

 鶏やウサギのように、両眼が左右を別々に見てしまう動物では、瞬時にこの立体合成を行うことはできない。なぜなら、左右の目はひとつのものを同時に見ていないから。だから彼らは、頭を動かしてひとつの対象物を2度見しなくてはならない。長い時間をかけて2度見するわけではないので実際は短時間で立体認識できているのだが、ヒトやフクロウなどのようにほとんど瞬時に距離感を感知することはできていないはずだ。イヌ科やネコ科も正面を向いた目を持っているので、立体視は得意なはずだ。一方、牛や馬、鹿などは、正面を見ることも出来るが眼の軸は正面を向いていない。だから、瞬時に距離を測ることは出来ない。その代わり、どちらかというと左右別々の景色をとらえることでほぼ360度を一度に認識できるので、動くものが視野に入ったらすぐに気付く。その方が捕食者をとらえるのに都合がよい。距離感は次の要素なのだ。

 一方、食う側の生き物たちは、獲物との距離が一番大事。常に立体視しながら相手に近づいて襲いかかる。もちろん、漫然と前を向いているだけではなく、細かく視線を動かしながら対象物を常に中心にとらえるという技を使っている。

 ヒトは、食う側の生き物たちとはちょっと異なった理由で眼が正面を向いている。脳が大きくなりすぎて直立しなくては運動機能が上手く制御できなくなってしまったので、眼は結果的に前方に寄せられて正面を向いてしまった、と考えると解りやすい。その結果、自由になった手で道具を使い、捕食者としての立場にも立つことになった。武器を使って殺し合うという愚かな行動まで身につけてしまったのも、悲しい結果である。

 脳が立体感を認識するために使っている視差の元はといえば、それは左右の目の距離にある。大人だとふつう6~7cmほどの間隔がある。その間隔のせいで、実は、左右の目がとらえている像は少しずれている。そのズレ情報を脳が経験則で処理して、見ている対象物がどのような立体になっているか瞬時に映像認識させてくれているのである。

 それに気付いた賢いヒトが、ならば写真も目の間隔くらい離したレンズで同時に撮影すれば、その2枚を並べて見ることで立体に見えるのではないか、と考えた。実に面白い発想で、現実にそれがステレオカメラという発明品になっている。1950年代に作られていたものを古道具屋で見つけ、ずいぶんと楽しんだ。普通の35mmフィルムを使って、通常の1コマ分のスペースにほぼ正方形の2コマを写し込む。

↓ コダックのステレオカメラ。Mも1台持っている。

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 現像されてきたフィルムを、その撮影コマの大きさに合わせた枠にはめ込んで、立体ビュワー(双眼鏡のような照明付きボックス)で見る。肉眼で見たときそのものの立体映像が現れるので、感動ものである。スポーツの映像だと、まさに瞬間の躍動感がわき上がる。
 これはポジフィルムで鑑賞するときだが、ネガフィルムを使ったときは、ほとんど同じ写真が2枚ずつできあがってくる。その順番を間違えないように左右に並べ、真ん中に仕切を立ててそこに鼻を付けて左右の目で2枚の写真を見る。すると、なんの苦労もなく頭の中で立体の映像になるから面白い。マジックである。

 試してみようと思っているのは、デジカメで位置をずらして同じ対象を撮影し、PC画面に並べて立体視してみること。問題なく出来るはずだ。ただ、動く対象物だと2台を板の上に並べて固定してレリーズ2本を同時に押す、などという技が必要かも知れない。

 花の画像や昆虫の画像を撮ってみたら、普段は見逃すような微細な構造が見えてくるだろうと期待している。

 なぜなら、双眼顕微鏡という装置で小さな生物材料を操作するのと全く同じ原理だからだ。

 写真はピントさえ合わせてあれば、画素数を上げることで拡大が簡単に出来る。
 夏休みの自由研究で「立体視で観察した昆虫のからだ」なんてトライしてみたら、めちゃくちゃ面白いのではないかと思う。

 なんだか、自分でやりたくなってきた。