Mです。
つい最近になって、Y子から ”物差し” のことを ”線引き” と言うのは方言で、多くの人は ”線引き”は定規のことを言っているのだと聞かされた。
Y子が大学時代、文房具のプラスチック・スケールを線引きと呼んだら、ほかの人たちが??状態になったのだという。
我々は同じ地域の出身なので、ふたりの間では 定規=物差し であり、特に区別していなかったのだと、ずいぶん生きてきてから知ったことになる。
神永曉さんという方が、「日本語、どうでしょう?」というサイトで、この ”線引き” について書いている。小学館の辞書編集に関わっておられた方で、それによると、この呼び名は静岡あたりが源で、神奈川、東京、千葉という感じで広がったものの、それ以上は普及していないらしい。神永さんは千葉県生まれで、やはり違和感なく線引きと読んでいたという。ところが、Mも学生時代に周りといろいろ実験等でスケールを使って作業していたが、違和感なく ”線引き”という呼び名を使っていて、周りから違和感をもたれたことがなかった。
これを知って、Mの学生時代に ”線引き” を異端視されなかった理由がわかった。同じ実験台で作業していた人間たちが、まさにこの文化圏の出身者に収まってしまっていたのである。ちなみに、5人いたグループの構成は、静岡×1,神奈川×1,東京×1,千葉×2,となっていた。なるほど、これでは違和感がないのも当然、同じ穴の狢だったのだ。
ものの呼び名に方言がいろいろあるのは気づいていたが、自分自身では、まさか線引きが方言とは、と思っていた。だって、線を引く道具だったし。
と、思っていたのだが、定義によるとどうもそうではないらしい。
線引きは、線を引く道具だから、定規が正しく、スケールつまり ”物差し” と構造的に違いがある、という。
定規は長さを測るためのものではなく、直線を引くために片側が直角に厚くなっていてそこに鉛筆やペンを沿わせ、場合によってはカッターの刃をあてるのだ、とのこと。
一方物差しは、長さを測る道具だから目盛りを両側に刻んでいることも多く、さらにその場合には目盛りの打ち方がそれぞれ違っていることもある。片方は1mm目盛り、片方は2mm毎とか。片側がセンチでもう一方がインチということもある。
そういえば、母親が裁縫で使っていた竹のメートル物差しは、片側はメートル法で、他方は尺貫法になっていたことを思い出した。(チャンバラで折ってしまって、こっぴどく怒られた)
はてさて、では、下の写真のものはどうだろう。
定義にしたがえば、上の写真は上から 線引き(定規)、物差し、物差しとなる。ただし、3番目の金属製品はカッターの刃も当てられるから使い方としては線引き以上の実用性がある道具だ。つまり、実用面では定規であり物差しでもある、ということになる。
目盛りの振り方をみると、上の2本はゼロ点が端にない。だから、壁の端から長さを測るには向いていない。物差しは長さを測るもの、という定義なのだが、それは端点から測る、という意味ではない。むしろ、ゼロ点を端っこでないところに置いて、そこを測るべき対象の端に持っていく、ということなのだ。端っこがゼロ点になっていると、正確に対象物の端に合わせられないから、という理屈。
でも、端から測れないという現実はどうもしっくり来ない。むしろ、対象物と一緒にして平面に立てて測れば、ゼロ点合わせが完璧になると思うのは、わたしだけ?
実際のところ、ものづくりの場面では、3番目の物差しが、上方2者の利点を合体させたという点で最も有用だ。店では金属スケールの名前で売られているから定義上は物差しなのだが、実際は線引きとしても重宝されるのだ。
とここで、新たな疑問が。
中学の頃持っていた竹の物差しは、片側が目盛りで反対側には目盛りがなく、直角に厚くしてあった。つまり、物差しであって線引きでもある製品があったのだ! その物差しは、目盛りが端から始まっていたから、まさに上の金属物差しの仲間と言える。 その道具が全国区だったのかどうかはわからないが、作った人は、物差しと線引きのミックスものが便利だと思ったに違いない。
定義によると、物差しとして売られているものは目盛りが端から始まるが、定規だけれども目盛りを持つものは、端から少し離れて目盛りが始まっているという違いもあるのだという。だが、上述の写真で、2番目は線引きの要素がないのに目盛りは端から始まっていない。
要するに、現実は、どうも曖昧なのだ。
それならよけいに、ミックスものの方が有利ではないかと思ってしまう。
物差し=線引き のあいまいさ万歳!