Mです。
その2
今様アナログ回帰はホンモノ? その2;アナログ礼賛とアーティストの変化 - 理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで
からの続きです。
レコードを作る際の最初の道具はマイク。それは、音の振動をとらえて電気信号に変換している機械で、その変換信号自体はアナログ出力だ。それをフィルター、アンプに通して増幅処理を施して磁気テープに記録したのが元々の手法。だから、ここまではアナログだった。それを再生して針の振動に変換してラッカー盤に溝として刻み込んだのがレコード盤のオリジナル原盤。それを元にプレス加工したプラスチック円盤が市販されたレコード盤だった、というわけ。
このあたりのお話しで、DENON(昔はデンオンと呼んでいたが今はデノン)の技術屋さんたちが書いているコラムがとても面白いのでご紹介する。
→ https://www.denon.jp/jp/blog/4563/index.html
↓ そこで紹介されているラッカー原盤
が、このマスター盤は永久保存できない。素材自体が経年劣化する。同じく、音源を記録した磁気テープも、磁性劣化で質が低下していく。
それを解決できると始まったのが、マスターテープのデジタル化だった。
当時世界をリードしていたSONYと名指揮者カラヤンの試行である。
音のデータをアナログ記録ではなくてデジタル化してから記録することで、時間経過と共に曖昧化していくアナログデータを、0と1の組み合わせだけに単純化したデジタルデータに変換して保存する。そうすることで、飛躍的にオリジナルの保存性が高くなるということを実証して普及に突き進んだのだ。当時、高精度のデジタル音源盤LP誕生と宣伝された(確かSQレコードと銘打っていた、Super Quaity?)。高校生だったMは、その流れで売り出されたスクリーンテーマ集のLPを買ったと思う。SONYが出した初めての4チャンネルLPだった。2チャンネルシステムしかないのに、それを購入して聴いてう~~んとうなっていた高校生の自分が、今思えば滑稽である。
そのレコードはどうして4チャンネル対応だったかといえば、レコードの溝が水平方向だけでなく上下方向にも変化することで4方向性のデータとして記録されたから。でも、Mのオーディオシステムでは水平方向の振動だけしか抽出できなかったので、実は無意味だった。それに気づいたのはだいぶ後のことで・・・笑
アナログデータをデジタルデータに変換した。と、ここまではその後の処理に変化は生じさせなかった。なぜなら、作るのはアナログ機器で再生するアナログレコードだったし、アナログテープだったから。ところが、変質劣化するレコード盤ではなくて、書き込み自体をデジタル信号にして不変化してしまうCDをカラヤンらが押して開発が進むと、世界は変わってしまった。
CDを作るとき、データは連続である必要がない、というか、連続ではなくなる。(その2参照)
簡単に言うと、音を短冊に切り分けてから繋ぎあわせるという作業が必要になる。
そうなると、当時のアナログの音源データをどのくらい細かく刻んでいくかが問題。そこで、人間の可聴周波数域を考えた。人の耳で聞き分けられる周波数は、大人だとおよそ20Hzから20,000Hzに収まるということが分かっていた。 つまり、1秒間に最大2万回振動する波まで記録できれば良いということだ。20Hzより低い音はどうせ音として聴いていないから、高い方に注目したのだ。波の振動が2万回、ということは、波がプラス側とマイナス側の双方向成分の繰り返しだということを考えれば、音はプラス側だけをとらえているのだからその倍の4万回振動する波をとらえられるように設定すれば20,000Hzの高音もサンプリングできるということになる。
それが、巷のCDで使われているサンプリング周波数44.1kHz(44,100Hz)の根拠である。なぜ40,000という切りの良い数字でなかったのかというと、デジタル・ビデオテープレコーダーの元祖となったSONYのPCM-1という製品で採用したサンプリング周波数が元になっている。ビデオ信号の記録に、この周波数が必要十分だったのだそうだ。
「ディジタル・オーディオの謎を解く」に詳しく載っている。
だったら、これ以上の高音は採る必要がないし、もちろん20Hz未満も必要ない。
というわけで、CD時代は、アーティストの作る音を細切れにしてデジタル録音し、小さな音でもはっきり聞き分けられるように微弱音を底上げ、大きい音を頭打ちにして・・・などの巧妙な加工の後にマスターCD(あるいはDATテープ)を作ってきたのである。
→その4につづく