Mです。
その3からのつづき
理論とコスパから発展に至った「音のデジタルデータ化」の時代。
しかしここで、前にも少し記したように、耳の良い、というか、微細を聞き分けてしまう耳を持った人々には違和感が生じていた。生演奏で聞いた音と、CDになった音がかなり違う、という違和感である。
正直なところ、その原因が何だとは誰も特定できないと思う。なかには、サンプリング周波数44.1kHzでは、取り込めない高音域に意味があるのだとか、音の連続性が崩れていることに問題があるのだとかいろいろ論評されてきている。だが、そこまで人間の耳が高性能なのか、と問われて的確に答えられる人はいないのではないかと思う。
でも、どこか違うし、はっきりそれが感じられてしまう。
それが、アナログの妙味、ということなのだろう。
事実、サンプリング周波数を96kHzにしてアナログレコードから録音したDATデータと、おなじDATレコーダーで44.1kHzに録音したものとでは、再生したときの趣が明らかに違う。つまり、データの連続性がアナログに近づくと聞こえ方が違ってくるのも確かな事実なのである。
↓当時のパイオニアさんDATレコーダーには、サンプリング周波数96kHzが
用意されていて、とても重宝している。
結局のところ、アナログの応答性しか持っていない鼓膜とそれに続く聴音構造(内耳)、聴覚神経等々、どれをとっても連続したデータでしか外界をとらえていない。そこに、あらかじめ間欠的に切り取ってきたものをつなぎ合わせた棒グラフのようなデータを音にして送り込まれたら、その棒グラフ突端の階段構造が聴き取れてしまっても少しもおかしくはない。階段と坂道は、同じ高さを上るのでも感触は違う、それと同じなのだと思うのである。
アーティストたちは、この差をより鋭敏に感じ取っているのだろうと想像する。
多分これからも、音の質も求めるアーティストたちがアナログ録音を選択する流れは続いていくと思う。ただ、一方では、音の緻密さよりもインパクトを求めて加工を重視する作り手も当然いるだろう。その場合は、デジタル録音~生産、の方が好都合でCDの方が都合が良い。
ユーザーにとっても、いい音で聴きたいな、というときはアナログレコードで聴けるし、携帯ツールでいつも聴いていたいときはデジタルで聴く、という使い分けができればそれで良いはずだ。
何のことはない、ユーザーが求めるものを提供していけば良いのだから、それはアーティストとユーザーが決めることなのだ。間に入るプロデューサー、メーカーはそのバランスを見極めてリリースの媒体をアナログでいくかデジタルでいくか判断していけば良い。ただそれだけのことなのだ。
ここまで書いておいて今更なんだ、と叱られるかも知れない。
正直なところ、音の世界は趣味そのものだと思う、と言うのがMの結論である。
そうなると、究極は、真空管アンプに戻る、ということになるのだろうか。
たしかに機械毎に音が変わるのは、好みを探すことに情熱を傾けられるひとにはたまらない材料なのかも知れない。
↓ 手持ちの真空管アンプ。なかなかしっとりした音が出る。
ところで一つ余談を。
むかし、レコードプレーヤーが売り出された頃は、ターンテーブルの回転数が3段階あったのを知っている方はどれくらいいるだろう。78、45、33rpmである。
その後、78は消えて、メジャーなプレーヤーは 45と33だけになった。
Mは当時、後から出てきた33回転は45回転よりも一歩進んだレコード盤で、こっちの方が音もいいのだと思っていた。が、レコード盤の製作者側からいうと、再生技術が確立した段階では、音の質は45回転盤の方が良いのだという理論を後から知った。
理由は簡単で、45回転の方が単位時間あたりの移動距離が長い。ということは、書き込める振動データがより微細になるからだという。
う~~ん、参った。当たり前のことに気づかなかった。
理系失格である。