Mです。
アナログ人間で、音楽は雑音も含めてCD以外が好み。たとえ砂嵐のようなノイズがあっても、諦めずにノイズ消しにがんばってしまう。
まだクリーニングに手を付けてもいないLPレコードが、開けっ放しの戸棚上段に水平積みされている。少しくらい斜めに立てかけておいても曲がらない分厚い蓄音機時代のSP盤は、硬い段ボール箱にずらりと差し込まれている。重いから、とても高いところに置いておくわけにはいかない。戸棚の下段で、スピーカーボックスに挟まれて動けなくなっている。
そんなアナログ収録音たちは、プレーヤーで再生されてDATに落とし込まれてから、編集用のツールを経てPCに取り込まれる。周波数フィルターを通さずに生データとして取り込むので、その音はたとえCDやDVDに焼こうともアナログ色を色濃く残している。それらは、圧縮してmp3程度の容量になってもまだ、カセットテープに落として聴いていた音に近いものを残している。薄っぺらでなく、奥行きが残った音なのだ。
ラジオ放送の世界では、これまでのAM局番組を各局ともFM波で同時に飛ばすようになってきた。電波を飛ばすためのコストが、FMにすることで断然下がるのだそうだ。送信範囲は狭くなるが、それは、放送塔を分散することで補えるし、もともと中継局はあったのでそれらを活かしてFMの輪を繋げばよい、ということだ。
昔ほど聴かせるための音楽番組が無くなってしまった今では、あまり気にする人もいないだろうが、同じ音楽をAMとFMで聴き比べたときの衝撃はすごかった。特にボーカルでは、別人の声に聞こえる程違って聞こえる。
NHKラジオでは、定時ニュースをAMとFMで同時に流すことが多いので、AMとFMで切り替えながら聴き比べるとその差がはっきりと判る。同じアナウンサーの声が、全く違って聞こえる。AMでは平べったい声になるが、同じ人の発している声が、FMだと上下・前後・左右に幅のある声質に変わる。それと似たような現象が、デジタル収録時にフィルターを経たCD音と、生録音したアナログ音との差になっている。もちろん、AMとFM程の差にはならないのだが、明らかに色合い(音合い?)が違って聞こえるのだ。
だからやっぱりアナログだよな、と思っているMに、アイ・オー データさんからの情報メールで「アナログ音源からスマホに直接ダウンロード」出来るという宣伝が飛び込んできた。
レコード、カセット、MDといった旧世代の収録音を、それら機器からスマホに直接取り込むためのインターフェースを造ったというのである。
もちろん、装置の組み合わせさえ考えれば、そして機器さえあれば、そう難しくはない作業だった。ただ、レコードの音って良いよね、と最近の人々が気づいたとしても、もはやプレーヤーも無いし、カセットデッキも無い。あったとしても、中間に調整機器がないと音量調整が出来ないから、思ったほど易しい作業ではない。
そこで、レコードプレーヤーにCDデッキを組み込んだ1万円台の「アナログ再生~デジタル録音」プレーヤーが新聞広告などに載っているのである。これを使えば、懐かしいあの曲がCDに簡単に録音し直せます、と言うのである。しかし、そこから先は、スマホまで繋がっていない。
スマホに取り込まれているのは、多くの場合、配信サービスによる音。ほとんどが、アナログの世界とは離れてしまっているのが現実だ。
そんなところに、アイ・オー データさんの中堅か若い技術屋さんたちが目を付けたのではないか、と思っている。
アナログ・ソフトは、見つけようと思えば旧い物も結構出回っているし、最新のアーティスト作品もカセットテープやレコードになっていたりするから、それを簡単にスマホに取り込めたら・・・と考えたに違いない。
これは、アナログおじさんからみても Good idea だと思う。
雰囲気の良い音を手軽に手に入れられるなら、それも文化の広がりをもたらす。
有線、無線を問わず、イヤホンの性能もかなり高くなっているので、アナログ音源からの音をスマホで聴いても、充分にその違いを堪能できるだろうと想像するからだ。
かといって、このインターフェイスが音楽配信の世界を脅かすものには決してなれないと思う。むしろ、共存可能で意義が深い。お互いにぶつかることはない世界で、要は、聴く側の気分でどっちにでも行ける、というだけなのだから、誰も文句は言わないだろう。
じいちゃんが使っていたラジカセから、スマホにダウンタウン ブギウギバンドの音をその場で移せる。ばあちゃんのスマホに、三橋三智也の歌声を簡単に入れてあげることも出来る。
そんなこんなで、世代間交流も深まれば、言うことなしだと思うのである。