理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

チッチゼミ 孫との遊びで四半世紀ぶりの再会

Mです。

 7月26日付けでY子がアップした孫との公園巡りの記事に、チッチゼミが登場した。東京湾の海辺にある埋め立て地の公園「若洲公園」でチッチゼミの抜け殻を見つけ、Mが歓喜した、という内容である。
 正直、Mにとっては感動モノだったのである。たぶん、孫むすめは何とも感じていなかっただろう。なにしろ、ちゃんと見たのは抜け殻だったのだから。

 f:id:otto-M:20200727234124p:plain生き物調査「セミの図鑑」さんより転載 ↓
   http://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/ikimono_tyosa/semi/zukan_semi.html

 このセミ、日本最小のセミ、として知られてはいるものの、その存在をちゃんと知っているヒトは日本人全体の1割にも満たないのではないかと思う。北海道にまで分布しているにもかかわらず、とにかく目立たない。オスの出す鳴き声(?)も、チッチッというごく小さくて短いものだから、ほかの音があったらかき消されてしまって聞き分けられない。また、ほかのセミたちと違って市街地の公園などには棲んでいない。ちょっと深めの山や森、しかも針葉樹の多いところに棲むから、ハイキングやトレッキングなどで市街地から離れたところに出向かないと出会えないのだ。そのうえ、声が小さく聞き取りにくいのだから、なおさら存在感が乏しい。

 かく言うMも、生まれ育った千葉県北部や、息子たちを育てた茨城県南部で出会ったことはない。スギ林、マツ林は周辺にいくらでもあるが、そこで出会ったことは一度もなかった。居たけれど見つけられなかっただけなのかも知れないが、子ども時代のポケット・ムシ図鑑に載ってはいたものの、一度も出会えていなかったのである。森や雑木林をくまなく遊び歩いたガキが出会わなかったのだから、たぶん本当に居なかったのだと思っている。

 60年あまりの人生で出会ったのは、一箇所でだけ。東京都と山梨県の県境地域の山奥。25年ほど前の話になる。

 当時、小学生の息子2人に犬一匹と夫婦で、山奥キャンプするのが夏休みのイベントだった。無人の沢筋にテントを張り、沢の水で煮炊きをする2泊3日。その際、探検のようにして柳沢峠という塩山街道の最高度地点まで歩き、そこから更に三窪高原という野草の咲く場所まで山道をたどった。その細道で、カラマツの幹にいる小さなセミを見つけた。それがチッチゼミだった。すぐに飛んで行ってしまったので、M以外はその姿をちゃんと見てはいない。家族に伝えられなかったことが、なんとも悔しい記憶として残っている。この道は、何度かたどったものの、飛んで行く姿は見えても、じっとしている姿を家族に見せてやることは、ついに出来なかったのである。

 そのセミが、なんと、東京の海辺に棲息している!?
 成虫は、ヒマラヤスギの細枝に1匹いたが、観察できるほど近くではなく、孫むすめには認識してもらえなかった。しかし、そのヒマラヤスギの幹には、いくつもの小さな抜け殻が付いていた。同じ樹にニイニイゼミの抜け殻もたくさん付いている。たいして大きくないそのニイニイゼミに比べても格段に小さい。黒っぽくてやや固めの抜け殻。半数ほどは、抜け殻全体に泥が付着している。ニイニイゼミも泥を付けていることが多いが、チッチゼミもその傾向があるようだ。たぶん、体表に小さな剛毛が生えていて、泥が落ちにくいのだろう。

 残念ながら付近のクルマのエンジン音も聞こえていて、鳴いている声は判別できなかったが、きっと鳴いてはいたのだと思う。

 セミの分布については、クマゼミの生息域北上が20年ほど前からしばしば話題になっている。温暖化の影響で云々、という解説付きで。確かに温暖化でこれまで棲んでいなかった少し北の地域にまで生息域を広げる、ということもあるのだろうが、本当のところはまだよく判っていない。Mは、20年ほど前に、茨城県南部のごく狭い場所で、クマゼミの声を聴いた。たどってみると、少し大きな茂みのある工場の敷地内から聞こえてきていた。とうとう茨城にも棲みついたか、と思ったが、3年ほどで聴かなくなり、それ以来耳にしていない。たぶん、植樹された樹木と共にやってきた何年分かの幼虫が、その狭い地域内でのみ羽化していたが、結局、個体数が少なすぎて交配~産卵というプロセスに至らず、絶えてしまったのだ、と想像している。

 それと同じで、たぶん若洲公園のチッチゼミも、埋め立て地の公園整備のために持ってこられたヒマラヤスギなどと共にやってきたのだと思う。根回りの土の中に、きっと相当数の幼虫が紛れ込んでいたのだ。
 この若洲公園は、設立が1990年だという。抜け殻の付いていたヒマラヤスギがいつ頃植えられたのかは判らないが、樹の周りの土がだいぶ落ち着いているし、根回りにある幼虫の出てきたセミ穴が半径3m程度に40個ほど広がっていたところを見ると、つい最近植えられたばかりの樹の根回りに紛れ込んでいた幼虫が這い出てきたとは思えない。既に何代も経ているのではないだろうか。たぶん、もうこの公園に棲みついて繁殖しているのだ。
 温暖化で北上、と言われるクマゼミと違い、チッチゼミはむしろ冷涼地域に棲む。東京の海辺は、水が近場にあることで少しは涼しいのだろうか?


 雨模様だったし、孫むすめの相手をしなくてはならないので詳しく探し回れなかったが、できれば近いうちにもう一度観察に行ってみたいと思う。