理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

若返りヒイラギ 続々報・・・そしてEnd!

Mです。

 4月の末に、葉がすべて丸くなっている老木ヒイラギで、太い枝の切り口付近から出た細い枝にだけ、トゲトゲのあるヒイラギ独特の葉が生まれていたことを記した。

www.yakuzaishi-y-co.work


 そして、5月にその続報を寄せた。

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 それから4ヶ月間、折を見てはそのヒイラギを観察してきた。新しい葉が出てきたら、それが丸いのかトゲトゲなのかを確かめたかったから。
 ところが、その小枝には、一向に新しい葉は生まれてこなかった。かといって、葉が落ちることも無く、ただただ静かに「そのまま」でいた、と思っていた。
 下が、9月はじめに撮った写真である。

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 葉が増えない、と思っていたのだが、実は、そうではなかったことをこの写真と過去のものを比較していて知った。追加の葉が、先端部ではなく、より幹に近い方に現れていたのである。しかも、それらはトゲトゲを持っていない、という驚きの事実に気がついた。

 下の4枚が、その様子が分かる写真である。5月14日と6月13日のものには見えない3列目の葉が8月12日に現れていて(8/12、赤矢印)、それは9月3日も変わっていなかった。

 

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 8/12写真矢印の葉2枚は、ちょっと尖りかけた部分があるが、いずれもはっきりとしたトゲは無い。ほかの写真も眺めてみたところ、この場所だけでなく、同じ枝元から出た小枝の他の場所でも、同じように鋸歯のない葉が何枚か出ていることもわかった。
 つまり、経過観察している間に、目立たなかったけれども葉が増えて来ていて、それらの中にトゲ無しが生まれていた、ということだ。ただ、よく目をこらしてみると、ほかの場所のような丸い葉とは言えず、丸いけれどもちょっとだけトゲっぽい部分があったりして、「トゲを出したかったけれど途中で諦めた」感のある様子が見えて、じつに面白い。 
 新しい葉は枝先で生まれてくる、と思い込んでいたが、この老木ヒイラギの観察で、そうとも言えないことを知った。先端部の葉を追いかけて、むしろ枝の基部に近い方にも遅れて葉が出てきたのだ。そして、それらは、小枝が生えてきた太い枝に茂る多くの葉と同じように、トゲの無い形態になっていた。

 この現象は、確証はないけれど、次の様なものではないか、と推察している。

 ①まず、全体として老齢化したヒイラギでは、特別なこと(枝が切られるなどの若返りを促す突発事態が起こること)が起こらない限り、発生してくる葉はみんなトゲ無しになっていく傾向がある。
 ②ただ、その傾向は固定したものではなく、大きな損傷を受けた場所では、再生とともに幼若化が起こり、若い頃の形質(トゲトゲ)が現れる。
 ③新生した若い枝では、先端部では再生の際に起こった幼若化がはっきりと現れるものの、時間が経つと樹本来の年齢に関わって起きている「老化現象」がこの若枝にも伝わり、あとから出てくる葉はその影響を受けてトゲを出しにくくなってしまう。

※何がどう伝わるとトゲを無くしてしまうのかについては、二つの方向で可能性が考えられるだろう。
 ひとつは、プラスの考え方。
 枝切りという過酷な条件で修復が必要になった太い枝の断端付近で未成熟の細胞たちがたくさん生まれ、それらが成長ホルモンの類を大量に作って放出した、というもの。つまり、老木になって量が少なくなっている成長因子が、小枝でだけプラス効果として働いた、というものだ。あえて名づければ、幼若化因子となる。
 この場合、その幼若化因子が十分にある限り、生まれて来る葉は本来のトゲトゲになると考えられる。しかし、時間が経って小枝の成長が緩やかになると、本体である幹と太い枝は老齢で幼若化因子は極貧状態だから、小枝でもその因子の濃度が低下していき、次第に本体と同じ環境に落ち着いてしまう。そのため、あとから生まれてきた葉は次第にトゲトゲを作ることを忘れてしまう。

 もうひとつは、マイナスの考え方。
 老木には、若いころの形態を作らなくする抑制因子が生み出されている、と考えるもの。
 何かは想像できないのだが、老齢になった樹木の形成層(幹、枝の樹皮の下にある成長する細胞たちがいる場所)では、若いころには少なかった物質が作られ溜まるようになって、それが、成長ホルモンなどの活性の高い因子の働きを阻害する、ということも考えられる。これを仮に老齢化因子と呼ぶ。この場合、新しく生まれた小枝の細胞たちが作る成長幼若化因子が働く場所にこの老齢化因子が水とともに運ばれていき、幼若化因子の働きを抑え込んでしまう。そのうえ、小枝での幼若化因子の生産も下火になっていくから、新たに生まれる葉は、トゲを作れなくなってしまう。

 結果は同じだけれど、その要因はいずれの場合もありうるだろう。ただ、老齢化因子、というものがあるのかどうかと問われると、幼若化因子説の方が素直でわかりやすいように思う。

 ここまで観察してきて、更に生じてくる葉がどうなっていくのかを引き続き観ていこうとしていた矢先の9月半ば、通りかかったMは愕然となった! 枝が無い!! 
 なんと、観察していた小枝もろとも、太い枝全部が切り落とされてしまっていたのだった。

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 それから半月あまり、まだ切り取られた付近から新たな芽が出てくる気配はない。
 とは言っても、寿命というものが無い樹木のことだから、きっと近いうちに切り口付近から新芽を出してくるに違いないと期待している。
 今度は、ゼロから観察してやるぞ! ・・・ と、意気込んでいる。