理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

ヨメナ しぶとくて可憐

Mです。

 田舎育ちで、小学校低学年の頃はムシと草花のポケット図鑑を携えて、野山をさまよっていた。そうでないときは、これまたポケット魚図鑑を持って、小川で釣り三昧。あまり、家の中にいた記憶がない。

 そんな少年Mは、春ならフジとツボスミレ、夏ならツユクサとホタルブクロ、秋はヒガンバナヨメナが好きな花だった。冬はというと、遊びによく使ったヤブツバキ、ということになるが、この花は、好きという程ではなかった。冬は野の草花がほとんど無かったからしかたがない。
 こうやって挙げてみると、好きな草花の色が、青から紫系統のものに偏っている。黄色や赤の華やかな色合いよりも、子どものくせにやや渋めの色合いが好きだったようだ。もちろん、それは今も変わっていないのだが。

 これらの野の花で、じゃあ何が一番好きか、と問われたら、ヨメナ、で即答である。

 なぜそうなのか、と聞かれたら、「地味でしぶとく、それでいて綺麗」だから、と応える。

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 この草はキク科で、親戚筋のヨモギのように強い。路肩のわずかな隙間でもしっかり育つし、細いながら茎は硬く、根元から何本もの茎が束になって生えてきて、それぞれの突端に淡い灰紫の一重の菊型花を付ける。中央部の雄しべの黄色いかたまりと、その周辺に放射状に広がる花弁のコントラストが、儚げに見えながら凛としている。

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 葉は細めで、根本に近い方では葉脈毎に少しとがった鋸歯を数個出し、先に行くにつれて鋸歯の無い細い形になることが多い。菊特有の深い切り込みはないが、葉の色つやは菊に似ている。ひとつひとつの花は、可憐なのだが、何しろ繁茂するようにして枝を多く出すので、全体としてみるとかなり賑やかなかたまりになるのも特徴だ。それ故、全体として、したたかな印象を与えるのだと思う。

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 ヨメナが一番好きな草花だという理由のもう一つは、この花の数が、花毎にだいぶ違っているということに気づいたことにある。花の数、というと疑問に思われるので書き加えると、花びらに思える一枚一枚が個別の花なので、花弁の数、ではなくて花の数、ということだ。
 菜の花の仲間のように、必ず十字花になる単純な形のものは別として、花(弁)の数が多い花でも、その数は奇数か偶数かのどちらかに偏るのが多いと経験的に知っているのだが、ヨメナにはその法則が全く当てはまっていない。この花は小さいな、と思って数えると、10個に満たないこともあれば、大きいな、と感じるものでは20個を越えている。ただ、その数値が9だったり10だったり、18だったり21だったり、というように、ランダムなのである。
 花がたくさん集まって出来ているキク科のタンポポについて、子どもの頃1本ずつ花を引っこ抜いて数えたことがあるが、想像以上にその数は差が少なかった。200個付近にだいたい集約されてきて、たしか、偶数が圧倒的に多かったと記憶している。
 それに比べると、せいぜい20個程なのに「てんでんバラバラ」なヨメナは、いい加減というか奔放というか、実に個性的なのだ。変わり者が好きだった少年Mは、そんな相手を見つけたのだった。

 ところで、ヨメナを嫁菜と書くことがあるが、その理由が今ひとつピンと来ない。堅苦しい封建社会が長く続いていた日本で、強い女性がむかしから好まれたはずはないから、しとやか、とか、かわいい、という表面的なイメージで当てたのかも知れない。
 そうではなくて、女性は強いのだ、という本質的なところをしっかりと捉えて、ヨメということばを当てたのだとすれば、これは、なかなかの命名だということになる。地下茎が丈夫で、切られてもすぐまた生えてくる強さを称えたのだとすれば、たいしたものだ。
 秋に咲くことが多いのは確かだが、この花は夏前にもよく見かける。酷暑の時期と極寒の時期を除くと、年に何度も咲いている。そんなところも、奔放でしたたかな本性を見せていると思う。

 脇道に逸れるが、したたかなキク科野草というと、貧乏草とかぺんぺん草と蔑まれている近縁の仲間がいる。白い賑やかな花を咲かせる、ヒメジョオンとハルジオンがそれだ。これら2種はよく似ているが、ヒメジョオンの茎には空洞が無く葉の元が細いのに対して、ハルジオンは茎に空洞があって葉の基部が茎をくるむように付いている。どちらの花も嫌いではないし綺麗だと思っているので、庭に生えてきても咲いている間は抜かないで見ている。どちらも外来種だが、そんなことはどうでも良い。やって来てしまったからには、平衡状態になるまで増えればよいと思っている。しかし、ヨメナは我が家にやってこない。草が多すぎて、日照条件が悪いのかも知れない。今年は、ヨメナの種を取ってきて撒いてみようかと思っているが、うまくいくかどうかは判らない。
 そう言えば、むか~し昔の松任谷由実さん(荒井由実時代かも)の曲に「ハルジョオン ヒメジョオン」というのがあったが、あれは訂正して欲しかった。ハルジオンは春紫苑、ヒメジョオンは姫女菀、意味のある違いなのだから。

 自転車で良く通りかかる秋葉原付近の総武線高架下に、ヨメナのかたまりがいくつか点在している。どれもコンクリート壁の際に溜まった土から生えていて、膝くらいの高さでまだ盛んに花を付けている。寒さが増してくるから、そろそろ種をつける頃だ。良く見ておいて、種を採取しよう。
 多年草だから今の株が来年も芽吹くのだろうが、なにしろ、土が少ない。少しでも土があれば近場に殖えていくかも知れないから、土を持って行って繁殖の手伝いをしてしまおうか・・・ まずいかな?