理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

ついに、猫にマタタビ の本質解明!?

Mです。

 岩手大学宮崎教授らのグループが、ついに、「猫にマタタビ」の本質を解明したという報道が飛んだ。

  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210121/k10012825001000.html
  https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-01-21

 

  ネペタラクトール(Nepetalactol)が、その本体。

  

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 イエネコだけではなく、猛獣として知られるライオンやトラでさえ、マタタビをいぶすとゴロニャン状態になるという、ビックリするような猫科特有の現象。

 マタタビの葉をつぶして嗅いでも、実を潰して嘗めても、ヒトはちょっと苦いと思う程度で何も感じるものはない。イヌだってそうだ。なのに、マタタビをいぶしたりすると、風に漂うニオイにつられて遠方から猫たちが集まってくるという図は、マンガのようで本当の話。

 M自身、マタタビを見分けられるようになって山の中で見つけたとき、この話を試してみたくてたまらなかった。実際に試そうと葉を摘んできたのだが、いぶす必要などなく、帰り道でいきなり猫が寄ってきて足下にゴロニャンしてきたときの驚きといったらなかった。なにしろ、猫の目が、近寄ってきたとき既に ”ホワ~ン” としていたのである。葉をわしづかみにしているMに、ねぇお兄さ~んっ、いい男じゃなぁ~い、と媚びを売ってくるのである。ただ問題は、相手の猫は男女、いや雌雄問わず、というところがちょっと違う。

 そのマタタビについては、化学が発達してくる中で、猫科のマタタビ嗜好に影響する物質的根拠を探そうという動きが生まれてきて、60年ほど前にネペタラクトン(Nepetalactone)がその原因物質だとして発見されていた。ネペタラクトールから水素を2個取り去った構造だ。上の構造式とは裏表がひっくり返っているだけで、形はほとんど同じである。

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 ハッカの成分として見いだされていた同物質が、猫科のマタタビ嗜好行動を誘発することは知られていたが、宮崎氏らは、それに満足していなかったのだろう。ネペタラクトンの「ゴロニャン」誘因効果は75%程度だといわれており、これが、現実の現象との乖離を感じさせたのかもしれない。

 更に深く探っていった結果、ネペタラクトンよりマタタビ嗜好行動を強く誘発し、しかも、マタタビの葉に10倍以上の濃度で存在することを確認したという。教授らの話によると、以前の抽出法、分析法ではそこまで行き着かなかった、ということらしい。確かによく似た構造式の物質で、単離手法、分析手法の進歩で可能になった発見なのだと思う。

 更に面白いことに、この物質は蚊などの昆虫に対する忌避作用が強いという。以前発見されていたネペタラクトンにもこの作用が確認されていて、教授らは、この蚊に対する防御効果が草木の生い茂った環境で暮らす猫科にとって有利だったから、マタタビ大好きの行動につながっていったのではないか、と話している。

 が、それはちょっと飛躍していると思う。動物の行動進化は、そう単純ではない。むしろ、都合が良いとか悪いとかではなく、猫科に共通した脳機能との関係で生じている現象だろう。蚊に効く、などという人間界の益不益とは次元が違う。
             
 それはともかくとして、こうなると次は、大脳生理学研究者たちの出番だ。ポジトロンCT、NMR、標識物質を使った蛍光や磁気探知、などなど、いろいろな方法で、ネペタラクトール投与時の猫たちの脳を、ありとあらゆる方法で解析していくことになるのだろう。そして、その応用として、快楽物質として、ヒトの医療応用につながっていく可能性もあるかもしれない。

 動物観察から新しいことを発見する。
 旧くから知られていた現象の中から、時としてキラリと光る大発見がもたらされる。
 なんとも嬉しく、そして少し羨ましい。

猫にマタタビ、ヒトに??
さて、Mがゴロニャンするのは、何に対してだろうか・・・