Mです。
時代小説が好きで、現代作家さんたちの手になる物をむさぼり読んでいる。中国時代物も好きで、これもまた、現代作家さんたちの小説専門。古典を読めるほどの素養が無いので仕方が無い。
そんな時代小説に、時折、「槐」という文字が現れる。
鬼の木って、何だ、と思ったが想像できるモノがない。中国物だと「槐樹」となっていることもある。「庭の槐」などと書いてあるから樹木だとは思っていたが、本筋に関係ないので、読めないまま飛ばし読みしていた。でも、何度も目にするうちに、さすがに恥ずかしくなった。こりゃいったい何なのだと、漢和辞典を引くことになった。そしてようやく一文字で「エンジュ」と読むのだと知った。
とはいえ、漢和辞典では、豆科の高木、程度にしか解説がない。それ以上調べなかったので、樹形も葉の形もイメージできずにいた。
そんな折、去年の晩夏に孫娘と遊んでいた公園(世田谷の砧公園)で、遊具広場の中にある大木に「エンジュ」というプレートがかかっているのを発見した。子供達が駆け回っているスペースに どお~ぉん と立っている大木。濃い緑の対生複葉(先端に1枚、その後対生で5~7列)がびっしりと茂った高さ8mくらいの木で、暗灰色で深い溝のある木肌がゴツゴツとしている。幹の直径は60cmほどだった。花が咲き残っていて、それを見て豆科だとすぐに分かった。小ぶりだが、ニセアカシアに似た形の淡いクリーム色の花が、やや平たくねじれて伸びた花柄の先にまとまって付いていた。強くはないが、柔らかく甘い香りも漂っていた。
実際に目にしてみると、濃い緑の葉を茂らせるので、しっかりと日陰を作る。豆科だから、冬は葉を落とすのだろう。夏は日陰を作り、冬は日を通す。庭に植えるのに適した大木ということだ。
時代小説では、江戸の大名屋敷に植えられている姿が書かれたりしている。さぞや広い敷地に悠々と枝を広げているのだろう風情を感じさせていたが、実物を見て納得した。
調べてみると、原産国は中国大陸で、中国では役人が出世すると庭に植える木だったのだそうだ。日本に伝わったのはいつなのかよく分からなかったが、花にルチンが含まれているので、薬用にされたとあった。ということは、木そのものを植えて楽しむためよりも、有用植物として渡来したのかも知れない。もちろん、大陸で高官の証とされていたことが、高位の武家屋敷に植えられるようになった理由だろう。
それにしても、ひょんな事から出会った槐は、実は公害に強い樹として街路樹に使われたこともあったのだそうだ。成長が遅いので、手間がかからず、道路管理には重宝したのかも知れない。とはいえ、現実に街路樹になっているところは見たことがない。成長が遅いとはいえ末は大木になるのだから、普通の広さの道には植えられなかった、ということかも知れない。
ところで、なぜ「鬼の木」なのか、そこのところは、まだ不明のままだ。
もう少し、突っ込んで調べてみよう。