理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

新型コロナウイルスワクチン 接種1回目

Mです。

 ほんとうは、接種を受ける気なんてサラサラなかった。
 数ヶ月前に居住地の市役所から送られてきたワクチン接種券も、捨てはしないまでも、そのままほったらかしになっていた。[新型]コロナウイルスでは呼吸器系疾患が重篤化しやすい、とは言っても、全くの[新種]ウイルスということではなく、何度となく晒されてきて時々は感染成立して「風邪」に罹っていただろう相手である。全く免疫を持っていないとも思えないから、もし感染してもそこそこ抵抗できるだろうと思っていたからである。

 ところが、感染拡大の最中にオリンピックまで開催してしまうという暴挙のなか、感染の広がり方がますます強烈になってきて、ビジネス上でもその影響が顕著になり始めた。
 Mの仕事は、開発受託である。こんなのが欲しい、こういうモノを作りたい、などといったユーザーの要望を叶えるために、希望に添ったモノや仕組みを作り上げる仕事なので、現物を目の前にした打ち合わせが必須であり常でもある。ところが、対面打ち合わせを避けてリモート会議、というのが主流になると、細かな話が出来ないのである。
 それでも先月までは、アクリル板越しにモノを見ながら同じ部屋の中で相談していたのだが、それすら難しくなってきた。Y子の所属企業のように大手企業はどんどん職域接種を進めているし、若年層のワクチン接種を急遽推し進めるという方策が採られるようになると、打ち合わせに先立って「ワクチン、打ちました?」の問いが始まった。Mのような零細企業は、ほぼ100%相手企業の方が大所帯である。その相手企業内で、感染源との接触は控えろ!という号令がかかれば、当然のことながらMさんて、ワクチン打ったのかなぁ?となるのである。
 クッソ~! と思いながらも、ついに撃沈。

 ワクチン接種券を手に、事務所のある区のHPから、近場でワクチン接種をしてくれるクリニックを探した。
 運の良いことに、近場でただ一箇所の接種クリニックは、3年ほど前に喘息を起こして通院していたクリニックだった。ラッキー、と電話してみる。他所の接種券だが接種してもらえるかと聞くと、これまた運良く、OKの返事。しかも「当院最終接種の予約中」だという。9月3日が1回目で、2回目が21日のスケジュールなら可能だとのこと。是非とも、と先週金曜10時前、久しぶりのドアを開けた。
 ワクチン接種日とは言っても、それだけ限定で行っているのではなく、通常の診察と並行して接種を実施しているとわかった。クリニックに入ってみるとすでに4人が椅子にかけていたが、それらの人々は普通の通院で、Mだけがワクチン接種対象。問診票を提出して待つこと10分ほど。診察室に入り、見慣れた医師に挨拶して丸椅子に座る。
 その後、喘息症状はどうですか、と聞かれ、ボチボチですと応える。じゃ打ちましょうか、と左肩にプスリ。何で筋注なんですかねえ、と聞いてみると、皮下だとかなり腫れるそうですよ。能書にそんな記載がありましたから、との返答。よっぽど痩せた人だと困りますが、短い針での筋注は、間違いも少ないしかえってラクだ、とのことだった。接種したモノが免疫原(抗原)そのものではない今回のmRNAワクチンは、身体に入ったあとで周辺の細胞に取り込まれ、その細胞内のタンパク合成工場でウイルスタンパク質がつくられる。皮下注射は、筋肉内注射よりも早く分散して体中にまわるが、その分、分解処理も速く進む。むしろ、その場所からジワジワと時間をかけて広がって少しずつタンパク質合成に移っていってくれた方が都合が良いmRNAワクチンでは、分解されにくい筋注の方が好都合なのだろうと、その話を聞いて思った。

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 接種後30分間、急激な反応が起こったりしないことを観察することになっているので待合室で文庫本を読んでいたが、その間にワクチン希望でやってきたのは3人だった。どうやら、ワクチン接種でてんてこ舞い、というような状況は過去のものらしかった。
 幸い、接種部位の痛みもなければ発熱等も起こらないので、そのまま帰ってきた。

 ところが、である。
 当日の深夜、そろそろ寝ようかという時分になって、接種部近辺の硬化と痛みが起こり始め、表面的ではなく深部での温度上昇を感じた。あきらかに、身体の中で炎症が起こり始めている感じてある。寒気は起こらないし、Y子に聞くと見た目にも変化は無いとのこと。副反応に痛みや発熱があるのは報じられているので不思議はないが、自分自身の感覚では、単純な現象ではないような気がした。
 とはいえ、それほどのことでもないのでそのまま眠りについた。

 ↓ 厚生労働省サイトから引用

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 そして接種翌日の朝、感じていた症状は明らかに進行していた。全身の筋肉がやや緊張気味で鈍く痛んでいる。体温も平熱から比べると明らかに高い。異常と言えるほど高くはないが、たぶん37℃域には入っていただろう。何となく頭がボーっとしている感じもあり、本人の感覚としては、風邪を引いているという実感だった。

 この時に思ったのは、自分が既に新型コロナに罹っていたんじゃないか、ということ。発症もしていたかもしれないが、大きな体調変化にまでは至っていなかったから、分からないまま回復してしまったのではないか、と感じたのである。
 そもそも、新型とはいえ、コロナウイルスという奴らは大昔から人間に感染し続けている。風邪の原因ウイルスとしても、ごく当たり前のウイルスである。当然、Mも何度も罹っては治っていたはずである。そんなウイルスの仲間なのだから、全くの新顔ということでは無い。したがって、Mの身体の中には抗コロナウイルス抗体も存在していて、新型コロナに出会ったときも、全く免疫反応が起こらなかったわけではなかったはずだ。完全防御、とまでは行かないまでも、ある程度は反応する抗体なり免疫細胞があるはず。それらが防御してくれ、新たに新型コロナウイルスに対する抗体も作られていたと思う。結果として軽微な発症で収まっていたのかもしれない、と想像するのである。
 だとすると、既に新型コロナウイルスに反応しているMの免疫系は、今回のワクチン接種で作られたウイルスタンパク質に出会って、「知ってる敵」に対する反応を起こした。時間的経過からも、それが、接種当日の深夜に始まって翌日がピークとなった、ということだろうと思う。現に、体温上昇を含む反応は接種翌日には収まってしまった。敵兵撃破、撤収!、である。

 自分自身の反応を観察して思うのだが、ワクチン接種時の副反応だとして言われている現象も、実は、既知のコロナウイルスに対して持っている免疫応答が、交叉反応としてワクチン由来抗原に反応している証なのかもしれない、と感じている。それならそれで、免疫力増強の観点から、ワクチンはちゃんと効いているのだと判断出来る。

 はてさて、2回目接種時の反応が楽しみである。
 1回目の反応が既存免疫反応の呼び起こしになったのだとすると、次回は、かなりしっかりした全身反応が起こっても不思議ではない。覚悟しておく必要があるかもしれない。
 とはいえ、相手はワクチンタンパクそのものであって、増殖するウイルスではないから、怖いことは無い。せいぜい、解熱剤を必要とする程度のことだろう。サディスティックな期待をしている自分が、ちょっと可笑しい。

 ところで、今回のワクチンに関するしっかりした解説が、お上からちゃんと出されていないのは、なんとも情けないことだと思っている。ワクチンを打てと号令をかけるなら、その仕組み、性質などを、きちんと、しかも簡単に説明することが重要だと思う。しかし、それが出来ているとは思えない。メディアも、わかったようなわからないような説明に終始していて、専門家の話を画面で紹介するだけで、本質的な解説が無いように思う。

 そんな中、すばらしい解説資料を発見した。
 新潟県医師会の峰宗太郎さんという方が、医師会勉強会で用いた手作り講演資料をネット公開している。PDF資料で大きいので、PCから行くのがオススメ。
  ↓
  https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/256915.pdf

 専門知識がなくても興味があれば解りやすく、知識のある人なら尚更よくわかる解説である。パワポで作ったのであろう資料は、簡潔で明瞭。重要なページを何度も示しながら、ワクチンとしての作用がどのように生まれてくるのか、そのとき身体はどう反応するのか、どんな現象が現れるのか、等々をきちんと説明していて、副作用についても原理原則を絡めながら不安を払拭できるように作られている。

 本当は、こういうことを厚生労働省医官が行うべきだと思うが、それが出来ていない現状は何とも情けない。
  その一方で、こういうことをきちんとやってくれる医師もいるのだ、と頭が下がった。

 新型コロナの騒ぎは、たぶん年を越すと思う。とはいえ、ペストのような強烈な伝染病とは明らかに異なる相手であることも確かだ。怖がりすぎる必要もないと思う。

 ワクチンが効くこともわかっているのだから、みんながきちんと理屈を理解した上で、やってはいけないことを各自が認識し、新型コロナウイルスとの共存を落としどころにするしかないと思っている。ウイルスを消滅させるなんて、できっこないのだから。