Mです。
だいぶ前に、ポータブル型SSDに耐衝撃性を持たせたG-Shockみたいな製品について書いた。2019年秋のことだった。
その製品は今でも結構売れているらしい。それから1年して、同じ容量レベルで驚異的なサイズダウンを施したUSBスティック型SSDが世に出た。BuffaloさんやSandiskさんらが、見た目はUSBメモリーそのものの製品を発表して、同様スタイルの製品がいくつものメーカーから次々に登場し、今では店先でチラ見しただけではUSBメモリーなのかUSBスティック型SSDなのか、よく判らないほどになっている。
そんなUSBスティック型SSDを、毎日のようにメールで新製品紹介してくれるソースネクストさんが、何日か前に紹介してきた。
見れば、22mm×67mm×9.5mm(幅×長さ×厚さ)と、いま手元で使っているUSBスティックメモリーとほとんど変わらない。ちょっと厚みがあるかな、程度である。
上図は256Gbだが、512Gb、1Tbも、本体サイズは全く変わらない。動作温度は、256Gbは0~70℃なのに対して、512Gb以上のものは0~55℃となっている以外、転送速度をはじめ仕様上の差は見当たらない。大容量タイプで動作温度範囲が狭くなっているということは、極小化したことでどうしても熱発生が防ぎきれない、ということを意味しているのだろう。 以前、64Gb程度のUSBスティック・メモリーでも、使用中に表面がかなり熱くなるので、大昔にバイクの空冷エンジンの襞にアルミの洗濯ばさみを付けて熱放散を補助したのと同じように、メモリーにアルミ洗濯ばさみを付けると温度上昇がだいぶ抑えられることを書いたことがある。たぶん、このスティック型SSDにも同じ手法が通じるのではないだろうか。
スティック型SSDの紹介を一昨年に見たときは、さほど興味がなかった。価格も高かったし、そこまで大容量のポータブル・メモリーを必要としてもいなかったから。しかし今回、価格的にUSBスティック・メモリーの大容量クラスと同等か、場合によっては数段安い製品も出てきたことを知ると、あながち無視も出来なくなってきた。
見方を変えて、なぜ外付けSSDをこんなにまで小さくしてきたのか、と考えてみた。
一昨年秋ごろ、ポータブルSSDが数多く出回ったとき購入を検討したのは、USBメモリーではちょっと難しい大量のデータ移管に使えると思ったから。ただ、持ち運びを考えると、落としたりぶつけたりと物理的衝撃でデータが損傷しないかとかが気になった。そんなときにG-ShockのようなポータブルSSDが現れて、だいぶ興味をそそられた。それでも結局購入していない理由の一つが、USB3.0コネクタでPCと接続できるのは楽なのだが、どうしても直接PCに繋げるのではなく、短いながらもケーブルで繋ぐというスタイルが気に入らなかったから。ケーブルまで含めると、バッグの中でそれなりにかさばるのだ。胸ポケットにポンと入れる、というのは無理。そんな感触を持っていた人が、多分たくさんいたのだと思う。
ただ、いきなりタバコケース程の大きさのブロックをPCに繋ぐのは危険だ。重さでコネクタが外れるかも知れないし、コネクタ自身が歪んでしまうかも知れない。だから、短い連結ケーブルを使うしかなかった。
そこで、SSD本体を極力小さくしてしまい、USBスティックのサイズにまで落とし込んでしまえばいいじゃないか、ということだったのだろう。
こうなってしまうと、もはやUSBスティック・メモリーとUSBスティック型SSDは、いったい何が違うのだ、ということになる。
実際、データを保管してPC間を行き来させるためなら、問題は必要な容量だけの問題である。どちらも記憶素子自体は同じ仕組みを使っているから、もはや従来型USBメモリーは不要で、みんな大容量のSSDにしてしまえば良いではないか、ということになる。値段は、1Tb以上のものになるとむしろUSBスティック・メモリーの方が高額だ。そもそも、そんな大容量は必要としていなかったのがUSBスティック・メモリーだったのだ。
簡単に挿したり抜いたりできる記憶媒体、というメリットがUSBメモリーの最優先課題だった。PCのOS側から見て、USBメモリーはあくまでもリムーバブルディスクであり、CD、DVDなどのディスク、MOディクス、さらに遡ればフロッピーディスクと同類の捉えられ方なのである。それら外部記憶媒体を、USBコネクタという統一規格に落とし込んで、ただ差し込めば良い、というスタイルにしたことで、いまでは、CDやDVDさえも必要ない状況を生み出している。何しろ、それまでのディスクは、どれも専用のドライブを必要としていた。デスクトップPCならどうにでもなったものの、ノートPC、タブレットPCと小型化していく中で、ドライブ装置自体がPCサイズの足かせにしかならなくなってしまった。回転駆動というモーター装置はどうしても厚みを伴うから、それをすべてなくす方向で現在の小型PCは成り立っているのである。
そんな中で、それまでPCの主要記憶装置だったHDDに代わってSDDが生まれ、いまではSDD主体のPCが主流になりつつある。MのようにデカイデスクトップPCを重宝しているような輩はだいぶ減っている。ゲーミングPCはその性能重視の観点からデスクトップのデカイものがいまでも主流だが、メインの記憶装置はもはやHDDではない。転送速度がHDDよりも数段速いSSDに取って代わられている。つまり、大容量のデータを速く読み書きできる記憶装置こそが、いまのPCの主要部分なのだ。となると、これまで外付けHDDを使っていた人も、外付けであってもSSDの方が便利になる。なにしろ、速度が速い。いくつものゲームソフトをため込んだSSDを持ち歩ければ、渡り歩く先で同じ仕事、同じゲームを構築することも簡単だ・・・ という流れで、SDDの小型化が進んできたということだ。
そしてこれこそがキモなのだが、SSDは、USBメモリーと根本的に違っていて、リムーバブルディスクの扱いではない。ローカルディスクとして認識されている。つまり、PCでマイコンピューターを開いたときに現れるメインディスクの仲間で、いわばPC本体の主要装置扱いなのだ。だから、パーティションを区切ることも出来るしダイナミックディスクに変換することも出来るなど、PCを動かす側の装置としての機能を備えている。だから、場合によっては、USBコネクタに差し込んだスティック型SSDでPCを駆動することも簡単にできる。言い換えるならば、スティック型SSDはデータ持ち運びのツールというより、PCの主要臓器にもなる記憶装置、ということなのだ。
単なるデータ持ち運びツールか、あるいは、それに主要記憶装置の意味合いを持たせるか、その使い分けがUSBスティック・メモリーとUSBスティック型SSDの分かれ道だ。
512Gbクラス、一度試してみようかな、と思っている。
どんどん小型化が進むPCパーツは、そのうち腕時計のようなPCを生むのだろう。
眼鏡型スクリーン、Bluetoothイヤホン、手指装着型キーボード、などでウェアラブルPCを操る世界が、もうすぐそこに来ているのかもしれない。
キアヌリーブス主演のマトリックスや士郎正宗さんの攻殻機動隊のような電脳空間SFモノは想像上の世界だが、こっちは本物のように思う。