理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

お粗末! ガックリくる日本の断熱事情

Mです。

 気温35℃以上が頻発したこの夏以降、9月半ばになっても晴れた昼には猛暑日の基準に迫る気温に晒されている。
 ラジオやテレビのニュースでは、連日、冷房を適切に使って特別な事情がない限り屋内で過ごすように、と注意喚起を続けている。そんなこと言われても、仕事を持っている人々にとって外出しないわけにはいかない。外出すればしたで、路面付近温度は40℃を超えるなかを歩き回り、たどり着いた仕事先に入れば28℃設定の冷房環境にホッとし、終わればまた40℃環境に出る、の繰り返し。まるで、温度ストレスの実験に晒される動物のごとく。熱中症にならずとも、温度ストレスで身体はガタガタになってしまうのだ。

 もはや日本は亜熱帯、という言い回しが的を射てしまっている現状で、ニュースで繰り返されている「涼しい環境」を自宅で実現するのはもう簡単なことではなくなっている。
 冷房装置があるのに使わないで熱中症で死亡した・・・という事故を何度も聞かされるが、高齢者にとっては実のところ”さもありなん”な事例だということを知らなくてはいけない。ここ数十年で多くの家庭が冷房装置すなわちエアコン装置を取り入れてきた。ところが、冷房を嫌うお年寄りは少なからずいて、その原因のひとつに日本の住宅構造にあると感じている。
 冷房という行為自体が嫌いなお年寄りがいることは事実だ。なにしろ、若い頃は団扇、扇子と扇風機こそが冷房手段であり、当時はそれで十分だった。部屋自体を冷気で満たすという発想が不要だったのだ。そのうえ、家屋自体も断熱性無視の通気性が良い構造なので、そもそもそこに取り付けたエアコンが理想の冷房環境を作れるか、というと甚だ疑わしい。事実、小生の母親(92歳、独居)の家も、窓は大きく間仕切りは障子と襖だけ。そんな家の一部屋の鴨居に寄りつけてあるエアコンは、つけられたは良いが実際に稼働しているのを見たことがない。本人曰く、点けたって部屋は冷えない、という。それもそうなのだ。周りじゅう隙間だらけで冷気を囲う構造がないのだから、エアコンと言いながら冷たい空気を吹き出す扇風機としてしか機能しない。しかも、熱い空気の中を進む冷気は、3メートルも進めば混和してただの室温風になってしまう。そんな状況では、冷房なんて意味がない、嫌いだ、となってもちっともおかしくないのだ。それなら扇風機に当たっていた方がまし、となる。
 もちろん、死亡例で明かされる環境はアパートの一室であることが多く、年金暮らしのお年寄りが冷房はお金がかかるという現実的な感覚からエアコンを使わなかったのだろうという推測も間違っていはいない。とはいえ、効率の悪いエアコン、というイメージができあがってしまっている要因が、住宅の構造にある、というのは疑いのない事実なのである。

 今日見つけたinfoseekさんのニュースにまさにこの問題点を鋭く突いている記事があった。
  https://news.infoseek.co.jp/article/goldonline_63410/

 なんだよ、ニッポンってこんなにお粗末なのかよ! と、ガックリくる記事である。
 技術先進国と唄ってきたニッポンは、亜熱帯化が進む現状のなかにいて、なんと世界のなかで”超”断熱後進国なのだ。

 Mは、断熱に関するノウハウを使ってメシの糧のひとつにしている。だから、断熱という行為にはそこそこ敏感で、我が家は断熱建材の先駆けにもなっているヘーベルハウスで建てた。10年前まではその建築構造だけで十分暑さ寒さが凌げたが、最近になってやはり夏の暑さには耐えきれなくなった。エアコン無しだった我が家にも、3年前ついにエアコンを装備した。とはいえ、700W 級の窓用エアコン一基なのだが、自分としてはそれでも悔しい思いが残る。この一基で現状20畳以上を十分涼しく保てるので、家の構造主体であるヘーベル板の性能に感謝なのだが、この対応の際にこれじゃダメだよな、と感じざるを得なかったのが窓構造だった。
 今回の記事は、まさにこの問題に対する指摘だったのである。

  ヘーベルハウスは断熱家屋だと唄ってきている。しかし、窓をはじめとしたヘーベル板の無い構造部分に関して言えば、アルミとガラスだけに頼った”高”熱伝導構造を採用していた。30年前の建築当時では、それでも十分に高断熱家屋だったのだが、温暖化が騒がれるようになって不十分さが認識され、2重窓を推奨する仕様を取り入れて「機密家屋」化してきた。その仕様で確かに断熱性能は上がっただろうが、基本はアルミ枠にはめ込むガラス構造をいじっただけで、本質的には何も変わっていない。むしろ、機密性が高まることで冬期の暖房時に発生する屋内の結露とカビの発生について見れば、屋内環境の悪化に繋がった面もある。アルミは、PCの心臓であり脳でもあるCPUの発生する熱を放散するための高性能熱伝導ヒートシンクとして使われている素材だから、この金属を窓枠に使っていること自体が、本来NGなのだ。それをいち早く認識したヨーロッパは、建築の基準に窓枠の断熱効率を追求し、熱伝導率の低い樹脂製窓枠を推奨するようになった。(下図参照) 木造家屋中心の日本で使われてきた木製窓枠は、樹脂枠に大きく劣ることがなかったが、アルミサッシ全盛の建築業界ではもはや使えない素材となってしまったために廃れてしまったのである。

  世界的に見たこの事情は全く知らなかったのだが、ついに窓用エアコン設置に舵を切らなくてはならなくなった時、Mは窓の断熱も行わなくては無理だと気づき、必要な場所すべての窓にアルミ反射材貼付の断熱シートを貼り付けた。ドイト店で売っている大型の断熱シートである。アルミ反射面を外に向けて、アルミ枠窓全体をシートで覆ってしまった。引違い窓なので開閉に若干の無理がかかるが、貼り付け方でどうにか凌げるし、むしろ断熱のためには開け閉めしない方が良いので、もはや閉めっぱなしの方が多い。アルミ枠とガラスの台所窓やトイレ、洗面所の小型窓には、アルミホイルを貼り付けた発泡ポリプロピレン板(20mm厚)をきっちりとはめ込んでしまった。これらの追加作業の効果は抜群で、そのおかげでたった700Wの窓用エアコンが20畳あまりの空間を冷やしてくれるのである。

 断熱という行為は、単純なだけにその効果が目に見えてわかる。家の構造を変えることはかなりのコストを要することだが、断熱が行き届いていない箇所を手に入る材料で補うだけで高い効果を得ることが出来る。
 たとえばドイト店の資材コーナーでは、1000×2000mmサイズの断熱材料が何種類も売られている。発泡スチロールの薄板もあれば発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレンの板も売られている。断熱性能で言えばスチロールが最も効果が高いが割れやすい、欠けやすいという弱点がある。性能は若干落ちるが他の2材料は壊れにくいメリットがある。プラダンと呼ばれているプラスチック製段ボール素材もそこそこ断熱性がある。そんな材料たちに台所のアルミホイルを貼り付けると、なかなかの断熱材料に変身するのだ。

 家全体を改造するのは難しいが、特定の部屋だけをもう少し快適に、くらいなら、工夫次第でけっこうな改造ができる。

 ますます厳しくなるだろう気象条件のなか、自分で出来るプチリフォームを試してみてはいかがか。これらの工夫は、冬の室内保温にも同様の効果をもたらすのだから。