理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

ハードディスクの健康診断

Mです。
 仕事で使っているデスクトップの1台が、システムエラーを起こして立ち上がらなくなった。デスクトップを常に2台並列させていて、現在メインに使っているのはIntelXeonマシン。
 去年の末までメインだったIntel core i7マシンが、夏の盛りにメモリースロットのトラブルを起こした。12Gb載せている物理メモリーのうち4Gb分(2Gb×2枚)が見えなくなってしまったのだ。マザーボードの基板に亀裂が入ったのかも知れない。それでも、動作上は特に問題は無いので、そのときサブだったAMD製CPU PhenomⅡマシンの中身を除けてXeonマシンに作り替え、メインに昇格させた。メモリースロットのトラブルを抱えたcore i7マシンが、サブに降格となっていたのである。
  何でわざわざデスクトップを2台も動かしているのかと言えば、仕事で使っているデータをはじめ、通信記録などを含めてすべての情報をダブルで保管していくためだ。
 ハードディスクを複数台パラレルに繋いでデータの同時並列運用を行うシステム(RAIDシステム)があるが、同一規格のハードディスクを複数台載せてマシンを動かすのは、コストがかかる割にメリットが少ないと思っている。たとえば、並列して3台のハードディスクを載せていても、実質的には1台分を3つ並べているだけで、結局は1台分のデータしか入っていない。2台はあくまでも予備であり、クローンである。ハードディスクは、確かに突然壊れる。だから予備がある方が良い。とはいえ、一つのマシン内に複数コピーを置くのなら、別のマシンに同じ情報を常に並列して蓄えていくという方法でも良い。しかも、マシンとして壊れることもあるのだから、1台より2台の方が安心だ、と思っている。たしかに、データを必ず両方に共有させておく手間はかかるが、データが壊れていないか確認しながら共有作業を施す程度のことは、安心のための一手間だと思っている。

 そんな方法で2台を並列使用していたが、月曜の朝立ち上げようとしたら、そのサブがBios画面でハードディスクにエラーがあるとコメントして止まってしまっていた。Biosに入ってどのハードディスクのエラーなのか探ってみると、なんとシステムの入ったハードディスクだった。
 これを見て、正直、やっちまったな、と思った。
 実はこのcore i7マシンを組むとき、システムをインストールするハードディスクをどれにしようかと考えて、容量的には問題ないからと、以前Win7マシンでシステムに使っていたハードディスクを再フォーマットして使ったのだった。320Gbモノで、製造年は2012年の東芝製。東芝製は定評があるので、日立製、WesternDigital製とともに愛用している。とはいえ、既にその当時で6年モノだったし、しかもシステム用に使っていたものだから、常にリードライトを繰り返していたディスクである。同じ年数でも、データを読み出しては書き戻すくらいの動作しかしないデータ用ハードディクスに比べれば、格段に仕事している。当然、発熱も多くて熱劣化が進んでいたはずだ。 
 それなのに、また、システム用に使ってしまったのである。

 今更ながら、とは思いつつ、そのハードディスクを取り出して、外付けマウントに入れて調べてみると、外見上はすべてのファイルが揃っていて、読み取り出来ない、という状況ではなかった。ディスクエラーチェックをしてみてもエラーはない。しかし、マシンに戻して動かそうとすると、やはりディスクエラーが出てSMART情報に異常があると表示される。要するに、データフォルダーはすべて揃っているが、ディスクとして起動するための設定情報の領域にエラーが発生していて先に進めない、ということらしい。
 となると、新しいハードディスクを用意してもう一度最初からインストールをやり直すか、正常な同規格のハードディスクにクローンコピーしてみるか、の2択だろう。
 一から作り直すのはしんどい。最終的にそうなったら仕方ないが、とりあえずは、土日にクローンコピーで上手くいくかどうかを試してみることにしている。

 こんないきさつの中で、ひょんなことから面白いソフトを見つけた。
 ハードディスクの現状診断を簡単に行ってくれるCrystal Disk Infoなる無料ソフトを見つけたのである。

 ◆ダウンロード等はこちら → https://crystalmark.info/ja/software/crystaldiskinfo/

 このソフトは、マシンにインストールしてタスクバーにピン留めしておけば、好きなときに繋いであるハードディスク等の診断を行ってくれる。正常なら青丸。ちょっとエラーが発生していると注意の黄色。問題ありが明らかだと異常の赤色。問題点が何なのかも細目表示してくれるので、ハードディスクの健康診断ツールとして重宝する。
 面白いと思ったのは、ハードディスクの起動回数や累積動作時間も表示してくれるところ。普段は気にしていなかったこれらの情報は、そのディスクをどんな風に使ってきたかの履歴になっているので、ハードディスクの使い回しをする際には、起動回数の少ないモノをシステムに使う、とか、累積動作時間の短いモノを大事なデータ保管に使う、とかいろいろ工夫できそうである。
 とは言っても、表示されている評価項目の中身をどう解釈すれば良いのかがまだ良く飲み込めていないので、さらに調べてみなくてはならない。宿題である。

 秋葉原のジャンク屋さんで中古のハードディスクを買ってくる事が多いから、これからは、買って帰ったらすぐにUSBマウントに繋いで、ディスクの動作履歴を見て使い方を判断するのが良いな、と思っている。なにしろ、購入の際に「こちらは、動作保証のないジャンク品ですが、よろしいですか?」と、毎回ことわりをいれられているMである。
まずは、健康診断してから使おう、と思う。

下は、このソフトで診断した例である。なかなか面白いので、皆様もお試しあれ。

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高速道路情報って、こんなもの?

Mです。

 これまで、さほど気になっていなかった高速道路での道路交通情報の仕組みに、びっくりするほどの不備を経験した。

 11月10日の11時前に、外環道(東京外かく環状道路)外回りを使って、埼玉県三郷市から千葉に向かった。ところが、いつもどおり三郷中央入路の坂を上っていくと、上り詰める前でゲートに車が何台も入れないまま止まっているのが見えてきた。右を見れば、本線のフェンス越しに大型車の屋根が何台も見えていて、それらも停止状態。すでに高速入路に入ってしまっているので、バックするわけにはいかない。あたりまえだが、Uターンして逆走するわけにもいかない。
 いったい何なんだ?と、高速情報ラジオを聞いてみた。流れていたのは情報ラジオ三郷で、まさにどんぴしゃのエリア。ところが、止まってしまっている三郷付近から先の外回りルートの情報が全く入っていない。首都高川口線の渋滞や外環内回りの大泉方面の渋滞などを繰り返すだけで、目の前の状況に対する情報が全く含まれていないのだ。ということは、この停滞状況は発生して間もないもので、まだ情報が放送局まで渡っていないことになる。情報ラジオは5分間隔ほどで内容更新するはずだから待つしかないな、と思いながらジワジワと進んでゲートをくぐり高速本線に入った。
 クルマの流れ具合は、動くには動いているものの、平均すれば自転車がどうにか倒れないで進める程度。時速2Km程度だろうか。後ろを見ると、同じように入路を上ってきてしまったクルマたちが、坂道を埋めてしまっている様子。それを見たクルマは、今頃、高速に入るのをやめてそのまま一般道を進む選択をしただろう。あと10分遅ければ、自分もそうしていたに違いない。今更嘆いても遅いが、何とも悔しい。

 ジワジワと動きながら再び情報ラジオをオン。・・・さっきと同じ内容だ。時刻更新されているのに内容は変わっていない。まだ情報が行っていないのだろうか? いったい、この渋滞がいつ始まったのかもわからない。

 実はこの道路、三郷で入ったクルマは、千葉県の松戸市に入らないと出ることができない。その間はずっと高架で、松戸市内からトンネルになって市川ジャンクションまでモグラである。ということは、松戸の出口より手前に渋滞のネックがあるのなら、そこまでは我慢するしかない。そこから先は走れるはずだから、とにかくジワジワ進むしかないということだ。

 一方、ネックがトンネル内だとすると、松戸で一般道に出てしまうか、それでも我慢でトンネルに入るかを選択しなくてはならない。残念なことに、松戸の出口で一般道に降りてしまうと、慢性渋滞地域があるため、目的の千葉市に行くには2時間かかってしまう。それを考えると、たとえトンネル内に渋滞の原因があるにしても、少しずつでも進むのなら、そのままのルートを選ぶ方が得策なのだ。

 とにかく、ネックが何なのか分からないことには、その判断もできない。とにかく、情報が欲しい!!

 カーナビのVICS情報も見ていたのだが、そちらにも一向に渋滞マークが出てこない。(VICS一般財団法人 道路交通情報通信システムセンター=Vehicle Information and Communication System Center)
 この時点で、三郷中央入口を入ってから30分経過していた。それなのに、情報ラジオもVICS情報も、この渋滞を無視し続けていたのである。

 そんな状況にいらだっている時、後方からサイレンの音。しばらくして、路側帯を道路公団(現NEXCO)の黄色いSUVトロールカーが走って行った。ということは、この渋滞の原因がまだ特定されておらず、それを確認するために公団車両が確認に走ったのだと考えた。警察車両も救急車も走っていかなかったということは、事故ではない。たぶん故障車がいるのだ。なるべく近いところであってほしいと念じつつ、ジワジワ、ジワジワと・・・・

 さらに30分経過。通常ならすでに目的地に到着している時分だが、まだまだ道のりは遠い。なにしろ、普通なら一般道でも15分で10Km先の江戸川を渡ってしまうのに、1時間で数kmしか進んでいないのだ。しかも、何度も内容更新した情報ラジオがまだこの渋滞を報じていない。いったい何なんだ!!

 そうこうしているうちに、ジワジワだった進み方が、腸の蠕動運動のように、数百mだけ時速20kmほどで動いては停まる動きになった。先頭の状況が少し改善したということだろう。この動きを繰り返しているうちに、どうにか江戸川を越え千葉県内に入った。松戸の出口近くになって迷ったが、状況が改善しているようなので一般道に出ずにそのまま進むことを選択。

 この時点で、1時間半経過し、トンネル区間に突入。トンネル入り口の表示板には、「トンネル内渋滞」とだけ表示されていた。原因不明である。

 トンネルに入っても同じような動きで進んでは停まるを繰り返してさらに15分ほど経って、ようやく原因が判明。トンネル内2車線のうち右側に大型トレーラーが止まっていて、公団の大型レッカーが移動準備をしていた。ずいぶん前に横を通っていたSUVトロールカーがその後ろにいて、職員が交通整理で赤色LED棒を振っていた。

 渋滞のネックまでほぼ2時間。ようやく頚木が解かれて自由の身になれた!

 そこから先は何の障害もなく、30分ほどで目的地に到着。途中で遅くなることはあらかじめ伝えてあったので、先方も了解済みだったとはいえ、打ち合わせの約束からは
1時間近くの遅刻だった。ごめんなさい。

 それにしても不可解なのは、あれほどの渋滞を起こしているのに、結局のところ、最後までその情報が表示板、ラジオ、VICSのいずれにも公にされていなかったという事実だ。
 NEXCOのパトロールカーとレッカー車が故障したトレーラーに到達していたのだから、その情報は当然のこと、情報ラジオ局、VICSセンターのどちらにも伝わっていなくてはいけないはずだ。それなのに、2時間もの間、全く情報が現れてこないままだった。あの後、レッカー車が故障車を移動させたとして、やれやれ動いたよ、動いたからまっいいか、で済ませてしまったのだろうか?

 高速道路は、利用者が使用料金を払って時間を買っている。それなのに、渋滞してしまっている状況を公にしないまま、入ってくるクルマに何の情報も与えないのは、悪く言えば詐欺行為に等しいと思う。
 鉄道のように元々事故が起こりにくい設備とは異なるので、渋滞したのが道路のせいだから金を返せ、とはならない。ただし、ほとんど進まない渋滞状況なのにその原因と場所を知らせずに入路閉鎖もしないでいたのは、走れないのを知っていて使用料金だけ徴収していた、ということだ。渋滞の情報がしっかり分かっていれば、高速を使わないことにした人も居れば、途中で一般道に降りたいドライバーもいたはずである。そうなっていなかったことで、渋滞に巻き込まれてしまった人もいただろうと思うのだ。
 
 VICS情報の仕組みはどうなっているのかと疑問になったので調べてみると、実施主体である先記の財団(一般財団法人 道路交通情報通信システムセンター)HPの説明は以下の図だった。

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 つまり、情報の元は、今回の場合、埼玉県警または千葉県警NEXCOということになる。今回、警察は出動していなかったから、NEXCO東日本が情報元だということになる。だとすると、出動したSUVパトカーもレッカー車も、状況報告をVICSセンターに上げていなかったということになる。ならば当然、交通情報ラジオ局にも伝わっていなかったのだろう。
 こんなことが常に行われているはずはない。現に、毎日のように沢山の渋滞情報がラジオで報じられているし、ネットで示されてもいる。カーナビの画面にも赤やオレンジの線が何本も現れては消えていくのだ。

 はてさて、今回のいきさつはどんなことだったのだろうか?

 ちなみに、スマホアプリの進化が激しい昨今、高速道路の渋滞情報は画面でその都度バッチリ確認できる。知り合いの大型ドライバー諸氏は、常にスマホアプリで確認しながらルート選びしているそうだ。残念ながらMは、ガラ携よりはちょっとましなガラホで、その手のアプリは使えない。だから、高速情報ラジオとナビのVICS情報が欠かせない。

 今回の渋滞のなか、多くの人はスマホで状況をある程度把握していたから、おとなしくジワジワ動きをガマンできたのかも知れない。

 とはいえ、所々にある道路の表示板情報が、ただの「渋滞発生中」だけだったし、「故障車あり」のメッセージが無かったのも事実だ。自分の目で見るまで原因さえわからずに耐えなければならなかった要因は、適切に情報開示しようとしなかった管理者側の姿勢にあると思うのだ。

 現場職員の怠慢なのか、それとも、NEXCOの内規に従った「正しい」処理だったのか、大いに疑問が残った。

 高速料金を払って通常の3倍の時間を要したユーザーとしては、納得のいかない一件だった。

チョコットで良いから、野性に帰ろう!

Mです。

 都市生活というやつは、人間たちを無防備な「いきもの」に変えているんじゃないかと思う。

 山野を歩いているのなら、周囲に注意を払いながらでないと何が起こるかわからない。目、耳、鼻の感覚を動員して辺りに異変がありはしないかと気にかけながら動く。ガサっと音がしたら、動きをとめて様子を探る。音の続きを聞き取り、その要因を探ろうとする。何かが視野の端で動いたら、やはり動きを止め、場合によって身をかがめて動きのあった方角をジッと探る。フワッと獣のニオイがしたら、風上に何か居ないかと目をこらす・・・・
 まあ、いろんな状況があると思うが、いずれにしても障害になるモノに注意を払いながら生きるのが、生き物としての人間本来の姿であるはず。

 ところが、都会の人の波に囲まれて生活していると、自分の周りに異質なモノなど居ないはずだという先入観があって、人間は「ひと」になっている。間が抜けてしまうのである。注意力の欠落だ。

 その中でも最近いちばん気になっているのが、もう普通になってしまった「モグモグ歩き」だ。10年くらい前なら、「あれま、あの人ものを食べながら歩いてるよ! 」と、すごいなぁと思いながら眺めていた。それが今では、その光景が至極当たり前になってしまっていて、その光景に慣れてしまった自分にも驚いている。

 今日も夕方、比較的広い道路を青信号が点滅を始めているときに、ハンバーガーの包みを左手に、ドングリで頬をいっぱいにしたリスのような口でモグモグ歩くお兄ちゃんを見た。もうすぐ赤になるだろうに、横断歩道から離れて斜め横断して行った。クルマが止まってくれるのは当たり前だと安心しているのか、たいした度胸だと思う。

 動物は、モノを喰っているときが一番無防備である。喰うという行動は生きるための必須行動だから、そのときは食餌に集中してしまう。ましてや腹が減っていて食いものが目の前にあったら、むしゃぶりついてしまうから、その瞬間を狙って敵が襲ってきたらまず逃げられない。喰われる側にいる生き物の場合、集団生活をして、食餌時も誰かが廻りを警戒して群れとしてこの食餌時の無警戒さを防いでいる例もある。下の画像のように、ライオンなどの肉食獣に常に狙われているインパラは、喰っている仲間たちが居るときに近くに必ず警戒する係も居て、その役割を短時間で交代しながら生きているのである。

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  ↑pakutasoさんから拝借

 そんな厳しい世界と人間社会が違うのは当たり前だ、と言われるかも知れないが、本当にそうだろうか?

 北の国から、で描かれたようなド田舎でかつ街から離れた山の中に棲んでいるとしたら、その人はインパラのように周辺に注意を払いながら生活するのが当たり前になっているだろう。そして、そういう生活をしていた人は、たぶん都市生活にはなかなか入れないだろう。怖くて生きていけない。なにしろ、知らない人間がウジャウジャ居るのだから、誰が外敵なのかわからなくて精神が疲弊してしまう。
 ところが、それでもガマンして何年か経って都市生活に溶け込めると言うこともあるかも知れない。良かったね、と思う反面、大事なモノを失ってしまったのだな、と気の毒にもなる。Mは田舎育ちだから、どうしてもそう思ってしまうのだ。

 どうでもいいんじゃない!?と思われるかも知れない。でも、敢えてひとこと言いたい。
「人混みだって結構危険なんだよ。いつ暴漢が出現するかも知れないじゃないか。そんなとき、モグモグしながら歩いてたら、周囲がサッと避けても察知できないよ!」、と。

 スマホを見ながら歩いていて自転車に衝突する人は、何人も目にしている。さすがにクルマに当たる人は見たことがないが、見方を変えると、大きなモノの動きはスマホを見ながらでもある程度わかるが、小さなモノの動きは捉えられていないということだろう。無差別刺傷事件を起こす輩が、脇からナイフを突きつけても判らないんじゃないだろうか。
 スマホ見ながらハンバーガーをモグモグ、なんて最悪だろう。

 グチっぽいけれど、廻りに迷惑になるような行動は避けるべきだし、最低限、自分の身を守る注意力を払って生活する、という習慣が、都市人にも必要なのではないか。そしてそれが、人混みを避けられない都市生活の中でおたがいを守ることにもなると思っている。
 インパラの群れの所々にいる見張り役を、人の群れの中で無条件に期待するのは無理だ。時には自分が見張り役にもなる気構えを持っていれば、人の群れはだいぶ安全になる。
 だから最低限、モグモグ歩きだけはやめて欲しい。
 安全なところで食おうよ。せいぜい10分でしょ!

ヨメナ復活!!

Mです。

 ほぼ1年前、秋葉原付近の総武線高架下で、ヨメナが数株咲いているのを見つけたことを記した。

www.yakuzaishi-y-co.work

 その場所は、清洲橋通り総武線が跨いでいるガード東側の北面。以前見たときには路肩のコンクリート縁石が凸凹と乱れ、わずかな土が線路からの雨水でいつも湿っているという、狭小ではあるものの湿った土に何種類かの草が生えている場所だった。ところが、その記事を載せて数日後、そのわずかな環境が、縁石修理が行われて土は削り取られ、代わりに砂利投入で整地され、草が生えにくくされてしまった。当然、咲いていたヨメナは跡形も無くなっていたのである。

 それから半年あまり。21年春には、その砂利面にいつの間にか少しずつ砂や泥がのっかって砂利の隙間を埋めてきていた。

 そして8月。ついに、除去されてしまったはずのヨメナが、砂利の下から芽吹いて伸びてきているのを発見した。

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 その場所が以前見た位置から1m程離れているので、茎が刈り取られて残った根から伸びてきたのではないと思う。多分、去年Mが種取りをした時に残しておいた花から落ちた種が、整地作業で砂利にまぎれて移動していたのだろう。

 さすがのヨメナも、貧相な土しかない場所ではどんどん伸びていくことはできず、ヒョロヒョロと少しずつ成長してきていた。通りかかる度にそれを観察するのが、なかなか楽しい。9月になると、3株ほど伸びてきている株の一つにつぼみが付いた。そして9月半ば、最初の花が一つ咲いたのだ。

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 さらに10月半ば、一番遅くにつぼみを付けた株でも開花した。

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 以前の記事で、しぶとくて可憐、と書いたが、本当に強い。この場所では、去年は何種類もの草が生えていたのだが、今はヨメナの他に生えてきている草がほぼ無い。それほど、痩せた土なのだ。そんな場所に生えてきたヨメナは、お世辞にもしっかりした茎とはいえない細い針金のような姿なのに、しっかりと花を咲かせたのである。徐々に株を増やしていくのだろう。観察を続けるのが、また楽しくなる。

 コロナ禍でジリ貧の世相が続いている。
 ゼロに近い環境で芽吹いて花を咲かせるヨメナを見ると、オレも生きているんだから前を向かなくては、と思わされた。

ホタルガ(蛍蛾) そのシックな装い 

Mです。

 人の感性はマチマチだ。
 窓にピタッと貼りついて動き回っている灰緑色のヤモリを、かわいいと見とれてしまうMのような輩もいれば、同じ姿を目にして大声を上げて逃げてしまう人もいる。人々が集まる牡丹園の鮮やかな光景を見て、なんてハデハデしいんだとそっぽを向き、道ばたのヨメナの方を愛でてしまうのも、また同じ。ひねくれる、と言ってしまえばそうなのかもしれないが、そもそも、興味の対象が根っこから異なっているから、ものの評価も当然変わっていってしまう。ただ、それだけのことである。

 Y子が、道で通り過ぎた女性の服装を見て、ホタルガみたいに綺麗だ、と言った。そしてすぐに、そんな風にいったら嫌がられるかもね、と言を引っ込めた。思わず笑ってしまったのだが、Mは、Y子の言う綺麗さが実によく理解できる。落ち着いていてコントラストのはっきりとした色使いのシックな装いだったのだろう、と想像できた。Y子の見て取ったイメージと全く同じなのかどうかは分からないけれど、遠く離れてはいないと思っている。

 人は、固定概念を持ってしまうことが多い。そして、それが感性の判断基準に組み込まれてしまうことがある。蛇は忌み嫌うもの。よく分からない虫は怖いもの。にゅるにゅるしたミミズは汚いもの。びっしり毛が生えた毛虫はおぞましく気味の悪いもの。などなど。そして、それらをひっくるめて、分類学を完全無視した「蟲」なんていうなんだか分からない語を作ってしまったほどである。要するに、なんだか分からない得体の知れないものたちを、好まざるもの、として纏めてしまったのだろう。平安時代に得体の知れない恐ろしいものを鬼という名で括ってしまったように、魑魅魍魎と同列に、気味が悪いと多くの人が感じるモノたちを、日の当たる世界から隔絶してしまったのだと感る。

 ところが、である。その姿形だけを見れば、アートにしか見えない色模様を持つ生き物はこの世の中にたくさんいて、分類してみれば、それらの生き物が、一方では嫌われているものとごく近縁だ、などということがままある。ホタルガもその一つだ。
 蛾、と言うと、多くの人は、夜間に明かりに集まって鱗粉を飛ばす茶色や灰色の昆虫をイメージするだろう。昼間に見る蝶は、綺麗な昆虫として例えるくせに、夜に現れるごく近縁種のことを綺麗だという人は滅多に居ない。社交界の着飾ったおねえさんを夜の蝶などと呼ぶが、Mに言わせれば、蛾の方が適切だと思う。夜飛ぶ蛾には、まさに女王と言っても良いと思う姿形の蛾がいる。オオミズアオという大型の蛍光色のような白い蛾を見れば、綺麗だと思わない人はいないのではないか。オオミズアオの対局には、クスサンという蛾もいる。もう何十年も出会っていないが、色目は華美とはほど遠く、むしろ荘厳さを感じさせる茶系統の複雑模様をまとう厳めしい姿で、オオミズアオが女王なら、こちらは魔王の感覚だ。多くの人が、夜その姿を目にしたら、思わず背筋がのびるのではないかと想像する。それほどに、立派なのである。

話が横道にそれてしまった。軌道修正!

 そんな、主に夜の昆虫だと思われている蛾のなかにも、昼に飛び回るものたちがいる。実は、ホタルガもその一つだ。

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 ↑ ホタルガの雌(触角が小さい) 昆虫エクスプローラーさんから拝借 


 赤い頭に櫛状の長い触覚を伸ばし、燕尾服のような黒い衣装の下端付近にくっきりした白い帯。盛夏前の林の薄暗がりや中秋から晩秋の木立の中を、ヒラヒラと飛び回る昼行性の蛾。派手さはないが、その落ち着いた色調が何とも美しい。白抜きのある羽で羽ばたくとき、白い残像が薄暗い空間を移動していく光景はとても優雅だ。葉に停まった姿は、凜として涼やか。うっとりしてしまう。
 その幼虫はというと、食草はサカキやヒサカキなので、農家の生け垣や庭の植え込みで頻繁に出会う。20mm程度の薄黄色に黒の縦縞がある毒々しい色調の毛虫だ。体には、毒のあるトゲが粗く生えている。大量発生するので、そこにもここにも危険マーク調の色が見えるくらいだ。脅かすと糸を吐いて葉っぱから離れてぶら下がる。それが面白くて、枝を揺らして毛虫にブランコをさせるのが面白かった。毒があるとは言ったが、たいした毒ではない。手の平ならどうということはないが、柔らかい腕の内側や手の甲にトゲが刺さると、あとからかぶれてかゆくなる、そんな程度の毒である。

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 ↑ ホタルガの幼虫 昆虫エクスプローラーさんから拝借


 成虫は捕まえると腹の先から汁を出し、これは何とも臭い代物。プロパンガスに付けてある臭気と青草をすりつぶしたニオイを混ぜたような臭さだ。幼虫の時代は、あまり臭くはないが口から緑色の液を出す。
 美しいものにはトゲがある、と言うが、美しきものは敵をたじろがす武器を持っている、のである。

 

 余談だが、昼に動き回る蛾をもう一つ紹介すると、スズメガの仲間たちがいる。その中でも、多くの人が蛾だと思っていないのが、オオスカシバではないだろうか。
 スズメガの仲間の特徴は高速の羽ばたきで、ヒラヒラと飛ぶ蝶とは全く異質の直線的な滑空をする。オオスカシバはその仲間たちのなかでも羽ばたきが速く、羽化直後は白い鱗粉が羽一面に付いているのに、飛び立てるようになるとその高速羽ばたきのせいで付いていた鱗粉が跡形もなく飛び散ってしまい、透明な羽になる。どれくらい高速かというと毎秒70回ほどだと分かっていて、それはあのハチドリの羽ばたきと同レベルである。昆虫の羽ばたきという観点ならハエや蚊の方が一桁上だから、決してトップクラスと言うことではないが、その飛び方の特性は、自由自在の空中移動にある。下の写真にもあるように、透明の羽でホバリングしながら花の蜜を吸う姿は、ハチドリのそれとよく似ている。全く異なる構造を持つ生物が、ごく似た運動形態を獲得しているというところも、生物界の妙というものだろう。

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  ↑ ホバリングでウツギ属の花で蜜を吸っているオオスカシバ Wikiさんから拝借 

 

 人それぞれ、好き嫌いはあるだろうが、時にはその壁を越えて眺めてみるのも良いと思う。今まで目を向けなかった世界に、思わぬ発見があるかもしれない。


 虫の居ない冬になる前に、公園で虫探しでもしてみませんか?

恐怖! 進撃の電動キックボード

Mです。

 数日前、車で移動中、朝の秋葉原駅近くで あわや!の目に遭った。

 昭和通り南下車線から東に折れた双方向道路。入って100m足らずの場所で、左側の細道から ”つくしん坊” のように直立した黒い影が飛び出してきた。こちらは慌てて急ブレーキ。当の”つくしん坊”は、そのまま直前を横切って右の路地へ突入。ほんの3秒ほどの出来事だった。
”つくしん坊” の正体は、黒の電動キックボードに乗った20代のやせっぽち。黒っぽいスーツ姿の男だった。

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 これまでも、車両の通行が少ない都内の街路で、この手の兄ちゃんに何度も出会っている。チャリで走っていると、音も無しに結構な早さで移動する直立人間。狭い板に乗って杖のようなハンドルを握って走り去る。速度は、Mの漕ぐママチャリより速い。ママチャリだって、車道を突っ走るときは30Km/h以上出すことはあるが、街中の通りで思いっきり走るなんて事はない。ところが、電動キックボードライダーは、空いている街路をくねくねと人をよけながら走るのを楽しんでいる、としか見えない。音がしないから、いきなり脇をすり抜けられるのはかなりコワイ。

 そんなヤツが、クルマの前を直前横断したのである。

 正直言って、追いかけて殴りつけてやりたい気分だった。

 去年の暮れ頃、電動キックボード輸入事業者が、国交省にレンタル事業で公道走行を可能にしてほしいという要望を出した、という報道があった。その時点では、公道走行の許可が出ていなかったので、閉ざされたコースの中でのレジャー走行しか行われていなかった。しかし、それでは販売増加は望めない。そこで、安全な乗り物だということを証明するから将来的に公道走行を許可してほしい、という流れになったのだろう。そして現在、都内の限定地域で実証実験が行われている。自転車走行車線を通行しても良い、という特例措置を設け、原付自転車と同じような装備を備えることを前提に、ヘルメット装着を任意にして実験中だという。

 ↓ 警視庁の説明サイト
   https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/doro/dendosukuta.html

 Mは思う。これって、現実問題として必要なことなのだろうか?と。

 今やかなりの数に上っている電動アシスト自転車。これは、乗っている人が足で漕ぐ、という動作を前提にしている移動装置だ。勝手に動いているわけでは無い。ペダルを漕がなければアシスト機能が働かないのだから、むしろ、重いだけの自転車だ。当然、速く走ることはできない。また、アシスト機能は速度上限が設けられていて、確か25Km/h以上になるとアシストは効かなくなる。つまり、それ以上の速度を出すときは、脚力のみの走行なのだ。速度だけなら、フレームの軽いスポーツサイクルの方がずっと速く走れる。つまり、電気モーターはあくまでも補助なのだ。

 ところが、電動キックボードは、この範疇には入らない。明らかに自動走行車両に入る。人は、ただ操縦するだけなのだから、自転車ではなくて自動車なのだ。
 その考え方から、警察庁は、電動キックボードは原動機付き自転車、つまり原付バイクと同じ区分だと判断している。したがって、原付バイクと同等の装備(ウィンカー、バックミラー)を付け、登録する必要がある(登録ナンバー)、と決めている。当然のことである。

 ところが、である。先の ”つくしん坊” もそうだったが、これまで見た電動キックボードで、警視庁の言う装備を付けているものは一つも無かった。ネット情報を見ると、販売者は公道を走るときは原付免許とそれなりの装備が必要、とは言っているが、買う側は「公道を走ることはしません」と言っておけば買えるのである。3~10万円程度で手に入れられるので、ママチャリと同等で手に入ってしまうものもある。スポーツサイクルより安い。それで、楽チンに結構なスピードで移動できる。見つからなければかまうことは無い。見つからない路地を走っていればいいのさっ!というところだろう。現に、これまで出会っているのは、大きな通りではない。街中の大通りに挟まれた路地ばかり。乗る側にとっても、クルマがガンガン通っている場所ではないから、安心して乗れるのだろうと思う。が、歩行者、自転車、などの側に立つと、ソコソコの速度で音無し走行してくる電動キックボードは、結構な恐怖対象になるのだ。その、ソコソコの速度で直前横断された「ドライバーMの冷や汗」を想像して欲しいのである。

 たしか最近、電動キックボードでお年寄りをはねてしまった、という事故があったはずだ。原付仕様に変えていない無免許車両だったと聞く。そんな事故がアングラでどんどん増えていくのではないかと思うと、ゾッとする。

 舗装路が完備している都内だから起こる、特殊な交通事故。田舎の砂利道では、絶対起こらない。そもそも、砂利道では電動キックボードは走れない。都会特有のコマッタ現象の一つなのかも知れない。

 以前、セグウェイという、立ったまま自由自在に移動できる乗り物が話題になった。展示会場や屋外のコースなどで、その動きと走りを堪能する催しが開かれ、映像がいろいろなところで公開されていた。体の傾きだけで向きと速度を変えられる未来志向の移動ツール。その先見性はなかなかだと思ったが、実際にはかなり限られた場所だけでしか使えないだろうなぁ、と予想していた。予想どおりで、その後の展開はかなり限局されているようだ。

 そんな未来志向移動ツールと比べると、電動キックボードはただの電動ボードだ。足で蹴る代わりに電気で動かすというだけのもので、新規性はどこにも無い。遊び道具としては使えると思うが、それを一般の移動ツールとするのは間違っている。危険回避の仕組みが全く整っていないからだ。

 役所がらみの申請が出てしまったので警察庁が実証試験を、という流れも、本当のところは、業者→政治家→省庁 というゴリ押しの結果なのではないかと想像している。

 電動キックボードは、あくまでも「レジャー施設内で遊ぶ道具」であって、「公道で使うもの」ではない。
 だいいち、あんな装置にミラーやウィンカーを付けて、かっこいいですか? ゴテゴテして、使いにくくなること間違いなしである。そこまでして買う人はいないと思う。

  実証試験をどのように落とし込むつもりなのか、警察庁の良心に期待したい。

ワクチン接種2回目 ああシンド~~

Mです。

 24日にファイザーワクチンの2回目接種を受けた。やることは1回目と何も変わらないので、全体で小一時間のスケジュール。
 一回目接種のあとはどうでしたか?、と医師に聞かれたので、結構炎症が起きた感じが強くてナカナカでした、と応えた。発熱があってだるかったというのがそれに当たるだろうから、その見方でいうとおよそ半分くらいの方はそうですね、とのこと。

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(参考資料)
  青森県立中央病院 ワクチン副反応調査報告 より拝借
  https://aomori-kenbyo.jp/archives/112080

 はてさて、それがワクチン製剤の化学的性状による反応なのか、それとも、mRNAワクチンが効果を発揮するための「適切な細胞に取り込まれてウイルスタンパクを作って血中に放出」されたタンパク質に対する二次的現象の結果なのかは、どちらとも判断出来ないのが現実だろう。
 ただ、もし後者だとした場合、一回目接種で起こった発熱(炎症)反応は、体内の免疫系細胞がワクチンで作り出されたウイルスタンパクを、①これまで見たことのない外敵、と見たのか、②「あのウイルスだ」と既知の相手と判断して起こった反応なのかによって、その意味は大きく違ってくる。
 ①の場合は、mRNAワクチンが効果を発揮するときは発熱を伴うものだ、という単純な現象になる。しかし②の場合は、知らず知らずのうちに既に新型コロナウイルスを体内に取り込んでいたか、あるいは従来型のウイルスに似ているということで、体内の免疫系が「あのウイルスだ!」と防御反応を発動した結果の発熱、ということになるからだ。この場合には、1回目接種から、すでに免疫系の二次反応(既得免疫反応)に似た現象が起こっている、ということになる。

 ところで、上に示したグラフは、実のところ、今回Mが接種を受けたクリニックの医師の感触とは、大きく異なっている。
 発熱に関して見ると、一番右側の棒グラフがそれにあたる。なんと、青森では、一回目投与で発熱した人は40人に1人である。2回目になると一気に増加して約半数。これは、東京都内でワクチン接種に当たっている医師の発言と比べると、あまりにも大きな差、という感じがする。
 半分程度の人が、1回目の接種後に発熱反応を起こしている、という医師の発言から思うのは、東京では、初回接種なのに軽度の二次免疫反応(過去に対応したことのある相手に対する反応)を起こしたケースが多いのではないか、ということ。そして、2021年9月現在で多数の感染者を抱えている東京都内では、多くの人が、実は新型コロナウイルスにかなりの頻度で出会っていた(発症しないで感染だけしていた)ということを示しているのではないか、と思ったのである。青森のデータは、東京よりもずっとクリーンな環境の人々だから起こったのではないか、という気がする。 

 だとすると、ほとんど東京で動き回っているMは、2回目接種後はシンドイ結果が予想される。1回目接種で免疫系は迎撃態勢を整えているから、2回目接種後は、mRNA由来のタンパクが出てくるだろう6~12時間くらい経つと、1回目よりはるかに強い免疫反応が起こり、熱も高くなれば、だるさ、痛さなどの全身反応も強く起こるだろう。
イヤだなぁ、でも多分そうなるだろうなぁ・・・、と思いながらクリニックから帰ってきたのだった。

 案の定、接種から8時間ほどで、内部熱感が起こってきた。身体の中が熱くなってきたと感じ始めたのである。体表面温度はあまり変わっていないが、暖かいものを避けたくなってきて、床の冷たさが気持ちいい、などの知覚に変わっていく感じ。食欲は落ちていなかったが、温かい食べ物はイヤだ、という感触があって、どちらかというと冷たいくらいの総菜を出来るだけ飲み込んだのだった。消化さえしてしまえばどうにかなる。明日は戦場かもしれないのだ、という気構えで食った!

 どうにか就寝まではそのくらいの状況で推移した。
 ところが未明、ガタガタ来る震えで目が覚めた。時計を見れば午前2時。接種から16時間である。明らかに表面体温が上がっていて、風邪で高熱を出したときの感触と全く同じ。ゴソゴソ起き出して解熱剤を飲み、その辺にある厚手の服をまとって毛布まで掛ける。しばらくガタガタ震えていたが、多分30分程度で解熱剤が効き始めたのだろう、再びの眠りに入れたのが幸いだった。

 翌朝は、普段通りに起きたものの体調は良くない。薬が効いているので熱はさほどでもないが、結構だるい。2時間ほどの運転が必要な移動をしなくてはならないので、解熱剤を追加しながら、どうにか気張った。

 結果的に、運転もどうにかなったものの、接種から30時間ほどは、とにかくだるく、さらに節々が痛く、ファイザーのバカヤロ~~~、と叫びたい気分だった。

 思うに、Mの場合、今回のワクチンは、接種一回目から既存の免疫反応を呼び起こしていたのだと感じる。それが、以前からあるコロナウイルス(当然Mは感染歴があったはず)との共通抗原性に対する反応だったのか、それとも新型コロナウイルスに最近感染していたためなのかは不明だ。
 ファイザーであれモデルナであれ、開発者たちは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク遺伝子を調べて、従来型との違いがある構造の元になる遺伝子を見つけ、そのmRNAを合成したはずだ。ただ、そのmRNAから作られるタンパク質は、古くからいたコロナウイルスたちの表面タンパク質と「全然違う」はずはない。むしろ、似ているけど違う、という程度のはずである。だから、今回の、初めて実用化されたmRNAワクチンがそこそこの効果を発揮できたのも、既存のウイルスとの共通性があったからこそだ、と考えることも出来る。「こいつ、あのワル仲間だぞきっと!」と認識できたので、ならば対抗しようぜ、と早期の反応が呼び出されたのだろう。

 正直言って、今回のワクチン接種は、仕事上の必要性がなければ受けたくなかった。多分、結構シンドイ副反応に見舞われるだろうな、と感じていたから。そして、結果的にその通りになった。

 多くの人の命を救うことになっているのは確かだろうが、一方で、今回のmRNAワクチン接種は、世界規模で壮大な臨床試験を行っていることに他ならない、と思っている。実際のところ、安全性試験等を急ピッチで進められたのは「ウイルスそのものを使うのではないから」という一点に尽きる。従来のワクチンでは避けられない、「感染源そのものをカラダに入れる」という危険行為は、慎重にも慎重を重ね、何年もかけて安全性を確認することでクリアしてきた。その時間経費がmRNAワクチンなら回避できるのである。
 それは分かるのだが、はっきり言って、mRNAワクチン自体が、まだ開発途上のワクチンなのだという事実も我々は認識しておくべきだろう。とにかく今回のコロナ騒動では、そんな開発途上のものであっても使わざるを得ない状況を作ってしまった。メーカーにとっては、棚ぼただったはずだ。
 使わなければならない状況に陥ってしまったから、リスク覚悟で各国とも迅速承認して使ってしまった、というのが現実なのである。

 今後、mRNAワクチンは、ワクチンメーカーの主要アイテムになっていくだろう。それは良いのだが、従来型ワクチンのような多能性を持たない「単一指向性ワクチン」である、という特質も軽視しないでもらいたい。従来型ワクチンの利点を踏まえながら、複数種のmRNAをミックスした場合の効果をみるなど、いろいろと検証を進めていくことも試して欲しい。
 デジタル時代にどんどん衰退してしまったアナログアイテムが今になって再評価されているのと同じで、従来型医薬が新型医薬に駆逐されてしまうことのないよう、製薬企業には、コスト最優先だけでなく、効果最優先の開発思考も捨てないで、味のあるクスリ作りを残して欲しいと思う。