理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

殺菌灯 大作戦!

Mです。

 先日Y子が記したマスク黒カビ事件のあと、以前から対策しなくてはと二人で話し合っていた納戸や畳敷きの部屋のカビ対策に、殺菌灯照射を試すことになった。
 部屋全体の殺菌消毒のために、調理場などで人のいなくなった夜間に点けておく紫外線ランプがそれである。物表面の菌と、空気中の浮遊細菌浮遊細菌の両方に効くはずだ。

 日焼けのために紫外線を浴びる人がいるが、その時使う紫外線は、日焼けはしても身体に深刻な障害はもたらさない紫外線B(波長280~315nm)と呼ばれるもの。殺菌に使うのは、紫外線C領域 (200~280nm)の光だ。最も殺菌力の強い紫外線は波長254nm付近と判っていて、市販の殺菌用紫外線ランプはほぼこのあたりの波長が出るように作られている。この領域の光は、後述するように、生き物の根源である遺伝子を破壊する。
 ランプ自体は見慣れた直管蛍光灯ランプと同じ形をしているが、蛍光材を塗っていない透明な管であることが見た目の特徴だ。管の材質も紫外線を通しやすい特殊なガラスで出来ている。高級な紫外線ランプは、紫外線を吸収しない石英ガラスを使っていたが、技術開発の結果、今ではほとんどの紫外線ランプが紫外線透過特殊ガラス製になっている。石英管は理化学機器などの精密用途に特化して計測用機器の光源として使われている。

 実は以前から、開け閉めの少ない納戸などで、カビの季節になると部屋全体がカビ臭くなってしまうため、以前商っていた自社開発の小型オゾン発生器を使ってきた。薄いアルミ弁当箱程度の大きさで、8畳程度の広さをオゾンで殺菌消臭出来る。オゾンとは言っても、濃度は人間がずっとそこにいられる程度の濃度になるように作った物で、危険はない。効果ははっきりしているのだが、残念ながら、小型高圧部品の入手が困難になって製造を止めてしまった。

 そこで、そのオゾン効果も見込める安価で手頃な方策として思いついたのが、殺菌灯、というわけだ。

 260nm付近の紫外線は、生き物の根元である核酸(DNA、RNA)を傷つけて再起不能にする、つまり殺す効果が高い。B領域、C領域の紫外線は、タンパク質にも変性効果をもたらすので、例えば裸眼で紫外線を見ていると透明なレンズ体が白く濁ってしまう。濁ったら元には戻らないから、医療措置を施さなくてはならない。白内障という疾患があるが、まさにこれが眼のレンズ・タンパク質の変性によって起こっているもので、紫外線が原因のひとつであることは良く知られた事実である。C領域の光は、地上にはほとんど届かないので実際上危険視されてはいないが、この光を発生させるランプは、生き物にとってとても危険な光なのだ。
 このC領域の光はまた、オゾンを発生させる方法のひとつにもなる。紫外線C領域の光はエネルギーが高く、空中の酸素にぶつかると酸素分子にエネルギーを与えて酸素分子同士をくっつけ、酸素原子3個からなるオゾンをつくる。オゾンはとても不安定な ”激情型” 分子で、酸化作用が非常に強い。ごく短時間に、いろいろな物質に電子エネルギーを与えて安定な普通の酸素に戻ってしまうのだが、この性質が殺菌力や漂白力として使われている。身近な例としては、東京江戸川沿いの金町浄水場で、飲料水の殺菌消毒および消臭に大いに役立っている。人が入ったら短時間で死んでしまう程の高濃度オゾンで、浄化槽を通した川の水を、最終的に飲める水に変えている。笑い話のようになっているが、市販の ”おいしい水” 各種と金町浄水場の水を「利き水」してもらったら、得票数最多が金町浄水場の水だったという事実がある。オゾンはそれほどに、強力な殺菌消臭力を持っているのだ。

 既に試しているオゾンも発生するし、紫外線自体が当たれば表面のカビも死ぬだろうし、という期待を持って、殺菌灯照射を試そうということになったのである。

 とはいえ、出来合いの殺菌灯装置を買おうとすれば、最低でも3万円とかする。しかも、タイマー装置や安全装置等でゴツくなり、とても一般家屋内では使えない。厨房設備や研究施設などの用途だから、当然だ。でも、われわれはそんな装置を使う必要はないわけで、ごくふつうの蛍光灯装置に紫外線ランプをくっつけてONすればよいだけ。当然のこと、ハンドメイドすることになった。

 ネットで探すと、紫外線ランプはすぐに見つかったのだが、照明装置を探すのにてこずった。
 各種電機メーカーの製品を検索して、10Wクラスで直管蛍光灯用の照明装置を探したが、出てくる製品はみんな小洒落たインテリア照明ばかり。探しているのは、天井からぶら下げられる「ただの蛍光灯」スタイルだ。そしてようやく探し当てたのは、業者用の壁付け蛍光器具だった。NECさんだけが、そんな地味な機材を今でも作っていると分かった。さすがに老舗、地味な物も作り続けてくれている。
 これでメインの道具は揃う。あとは、どうやって天井から吊り下げ、必要なときにだけ点灯させるか、である。
 電源取りのために、壁コンセントから配線を這わせて天井まで持っていくのはあまりに芸がない。出来れば現在使っている天井コンセント(照明用シーリングコンセント)から電源分岐したい。そうすれば、既存の電灯の近くにぶら下げてそのコンセントにつなげばよいだけだ。シーリングコンセントの分岐パーツはないか、と探すと、インテリア照明用の分岐部材はいくつも見つかるが、天井部分で直接横に取り出せるパーツではない。無駄な配線が垂れてしまったりで厄介だ。そこで分岐パーツという品目で探すのではなく、天井コンセントというカテゴリーで探していたら、なんと、シーリングコンセントの中間アダプターとしてコンセント付きのパーツが見つかった。誰が作っているのかと思ったら、Panasonicさんだ。松下電器として世に出したのが、有名な二股ソケット。壁にコンセントを設置するよりも前の時代に、天井の裸電球のソケットを分岐して別の電気器具に電源を分けるというものだった。この中間アダプターは、まさに「現代の二股ソケット」なのだった。NECといい、Panasonicといい、やはり大物には大物の気概が残っているのだと感心した次第。

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*写真上段が蛍光灯装置、中段がシーリングアダプター、下段が殺菌ランプ

 ここまで揃えば、あとは24時間タイマーをこの中間アダプターに差して、タイマーに殺菌灯を接続すればよいだけだ。

 ということで、揃えた役者は以下の通り。タイマーは手持ちだったので、今回は購入していない。(オーム社のもので、1000円くらいで買える)。

 必須ではないが、NECの蛍光灯装置にはスイッチがないので、紐で引く電灯スイッチを秋葉原で入手してきた。

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 *シーリングアダプターと引っ張りスイッチ

1基あたりの値段は、
 蛍光灯装置(NEC)      ;1,452円
 殺菌灯(NEC,10W)        ;1,241円
 シーリングアダプタ(Panasonic); 323円
  引っ張りスイッチ(Panasonic) ; 330円
              合計  3,346円

  装置買いするときの1/10で揃ってしまった!

 さて、いよいよ組み付けである。
 とは言っても、結果として、組付けはさほど難しくなかった。ほとんど子供のプラモデル程度。ただ、引っ張りスイッチを取り付ける場所がないので、蛍光灯台のランプ反射板の中央端に穴を空け、ランプ中央に紐を垂らせるようにしたのが、いちばんの手間だった。

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 *スイッチ穴はφ10mmだったので、手持ちの6mmドリル刃で開けた穴を
ハンドリーマーで広げた

また、内部結線だけはきちんとしたかったので、配線は全てハンダを使ってつないだ。

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製作時間は、3台作って1時間ちょっと。まあまあ、かな?

3台とも、どれも人のいない時間帯に合わせて、1日あたり2時間ずつ2回点灯して効果を見ている。下の写真がそのうちの2台である。

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 *左は、照明がシーリングライトだったので、アダプターから電線を引いてタイマーを設置した。右は、つり下げ蛍光灯だったので、タイマーをアダプターに直接差し込んでいる。本当はこの方がスッキリしていて良いと思う。

 今のところ、1日4時間でも効果が現れていて、嫌なにおいがだいぶ消えた。紫外線は表面にしか効かないので、日々当たる面をひっくりかえしたり横向けにしたりと、工夫しながら楽しんでいる。