理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

「きれいすぎない子育て」が大事!

Mです。

「きたない」は、必ずしも害ならず。
信念の一つである。

世の中、汚いものだらけだ。
いちばん汚いのが人間の果てしない欲。金銭欲、出世欲、支配欲、云々、いくらでもある。それにくらべると、自然界の汚いものなど、水さえあればどうにか落とせるほどの「よごれ」がほとんどだ。

年々ジワジワと増えているように感じる小児のアトピー症状。都会、田舎の関係なく、幼い子供たちが首や顔をかきむしってしまう姿は、とても耐えがたい。おなじように花粉症もたいへんだ。

田舎育ちのMのこども時分、アトピー症状を起こしている友達はほとんどいなかったと思う。牛乳を飲むとじんましんが出る、という友達はいたから、免疫システムがイタズラしてアトピーに類する症状を起こすこどもはちゃんといたわけで、人間がこの50年ほどで変わってしまったわけではない。反応してしまう対象物が増えたから、というのでもなく、からだの側で免疫系の異常症状が起きやすくなる生活スタイルが増えてきたから、というのが本当のところだと思う。

キヨミちゃんと名付けたサナダムシを自分の腸に飼っている、という笑い話のような本当の話で有名な寄生虫学者(=免疫学者)藤田紘一郎さんが、アトピーについても本を出している。そこでも触れられているが、腸がシッカリと外部の異物やばい菌たちを取り込んで処理するという過程を経ていないと、正常な免疫システムができあがらない、という事実がある。口から入ったさまざまなモノを、腸内細菌と腸壁の免疫細胞たちが協力して処理して健康な腸を守っているのが、正しい生き物のかたち。その仕組みが崩れると、異常なかたち、つまり攻撃しなくても良い相手を攻撃してアトピー症状に進んでしまう、ということ。

下も藤田さんの本で、腸の免疫システムを面白おかしく開設している良本である。

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ほかの動物たちと同じで、人間も自然界のモロモロを手にし、口にすることでカラダがそれらへの対応方法を学んでいく。腸管は、免疫系の一番大事な出先機関のひとつで、そこで消化・吸収しながらカラダにとって安全なものとよからぬものとを判定している。

だから、すごくきれいな環境で育った動物は、普通の環境はとんでもなく危険な環境になってしまう。なにしろ、ばい菌、ムシ、生き物の出したカスやらなにやら、とにかく会ったことのない異物たちがいっぱいで、そんな「きれいな動物」は免疫系がパニックを起こしてしまうのだ。
ふつうの自然界は、それほど「きたない」のである。

けれども、そんな「きたない」自然界で、動物たちも人も繁栄してきた。
ということは、「きたない」=「害」ではない、ということ。

日本の家屋は、西洋人が「日本では、人々は木と紙でできた家に棲んでいる」と表現したように、自然界のものがどんどん入り込んでくる作りだった。すきま風のことばかりではなく、材木や畳はカビをはじめとする微生物の培養器のようなものだし、ダニなどの微小生物の棲み家でもあった。クモやムカデも入り放題だったし、ネズミが天井裏や縁の下で生活していた。壁にはヤモリがへばりついてハエを狙っていた。そんな生き物たちの出す排泄物も、乾けば屋内空間を飛び交っている。人は、それらの生き物たちと共生していたようなもので、彼らの排泄物を常にカラダに浴びたり吸い込んだりしていた。

だからといって、それでみんな死んでしまうことなどなかった。たしかに、平均寿命は今よりずっと短かった。人生50年、と織田信長が舞っていたというが、それは、栄養状態の違いによるものが大きいだろう。単に生活環境が「きたない」から早死にしたのではない。医療も未発達で、今なら助かる病気やケガで早くに死んでしまったということが多かっただけだ。

そう考えると、藤田さんがいうように、あまりにもきれい好きな世の中の風潮が、少々「きたない」くらいは問題視しないはずのからだのしくみ(免疫系)をアンバランスにしてしまった、というのは正しいと思う。

あまりに「きれい好き」でアルコールでしょっちゅう手を拭いていると、皮脂はなくなり角化層が剥がれ立って皮膚の深くまで有害物質が届きやすくなる。化粧品や洗剤など、本来は皮膚内部にまで行かないはずの化学物質が、たやすく皮膚の深くにまで達してしまう。すると、真皮ではもともとからだには無い害毒物質を排除しようとするから、血流を集めてきてジクジクと漿液をしみ出させて流し出してしまおうとする。炎症である。痛かったり、痒かったり。これが、アトピー症状の一つでもあることはご存じの通り。

反応してしまう相手が化学物質なのか、ダニの死骸や糞の成分なのか、それはいろいろだろうが、もとはといえば、皮膚の防護機構を無視して「きれい好き」を押し進めた弊害が現れた可能性が高い。

これはほんの一例だけれど、密閉化された家の中を、一生懸命化学物質でお掃除して、からだもゴシゴシと洗浄剤でこする生活スタイルは、生き物として正しい姿ではない。
人は、微生物がうじゃうじゃいる環境の中で共生しているはずだった。それを、なまじ知識を持ってしまったために、「単純なよごれ」と「本当に排除すべき汚れ」が区別できずに一把ひと絡げで「清潔」を目指してしまう。そこに、現代病を生む素地があるのだと思っている。

こどもは、少々汚れていたくらいで病気になったりはしない。むしろ、洗剤や化粧品を呑んでしまうことの方が遙かにコワイ。

土だらけになって遊んで、手に泥が付いていたら水で洗い流せば良いではないか。アルコール清拭なんていらない。
少々洗い足りなくても、手づかみでものを口にして良いではないか。そうやって微生物を腸に届けて、良い菌、悪い菌を自分のからだで判別対処できるようにすることが大切なのだ。

異物だらけの環境の中で、本当に害になるものを排除していけるような基礎教育が、本当は大事なのだと思う。

からだづくりは、きたないものとの共存だと言い切っても良いと思っている。