理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

リースPC データは使用者責任で!

Mです。

 神奈川県がリースで使用していたPCのHDDがオークションサイトで売られていた、と分かって大騒ぎになった事件。その責任の所在を、リース会社やその下請け企業に全て負わせる論調がまかり通っているが、個人的には本末転倒だと思っている。

 ハードを借りるのと、自分で作ったデータを管理することは全く別の話で、そもそも、自分(あるいは所属組織)の管理情報を処理もせずに持ち出させてしまう神経がどうかしている、と思うのである。もちろん、リース契約の条項に含まれている「データ消去」を契約者が行わずに下請け企業に丸投げしていた、という事実は当然責められるべきものだ。法的措置が執られてしかるべきだと思う。しかし、だからといって、個人情報を”ふんだん”に盛り込んだ行政データを、自分達で処理することなく企業に丸投げする役所もまた、無責任この上ない、と思う。発想が、前時代的なのである。この行為は責められずに済まされてしまうのか?!

 要するに、借り手が甘ちゃんのド素人、と言われてもしかたがない状況なのだ。素人に責任はない、で済まされる話ではない。役所の責任も大きいと思うのだ。

 個人情報保護が当たり前の世の中で、それを扱う者が、データ破棄を人任せにしてしまう神経こそ、間違っている。

 そう思っていたら、なんと、世の中の風潮はそうでもないらしい。
昨日(1月5日)の朝日朝刊社会面に、中古PCの処理事業者らへの厳しい視線が、中古部材の流通に暗い影を投げかけている状況にある、という記事が載っていた。

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 この記事には、{ データはどこへ HDD流出)中古パソコン処分、波紋 「HDDすべて破壊?利益薄すぎて」}という文言が続く。

 これは、中古PCを扱う事業者たちに、記憶媒体の管理を厳しくさせるべきという風潮が強まっているという内容で、その行く先が、HDDなどの記憶媒体の中古市場を動きにくくすることに繋がっている、としている。そんな中で一気に忙しくなってしまった事業者はHDDの破砕を手がける企業なのだが、同時にHDD再生利用も事業の核になっているので、諸手をあげて喜べることでもなく、いわば泣き笑いの状況に陥っている。

 一方で、PC周辺機器のメーカー(アイ・オー・データさん)では、このような風潮に対応して、個人ユーザーにデータの処理をきちんとしてもらえるような土壌を作ろうと、データ消去ソフトを無償配布し始めた、という記事も付随。この対応には、事業者を悪として見がちな世の中に対して、控えめだが、データを管理するのはあなたですよ!、という教育的配慮があるように感じる。

 個人でさえそうなのだ、他人のデータを扱う役所が、入力作業はするけど管理は知らないよ、と言わんばかりのいい加減な意識でいて良いはずがない。「職員のデータ持ち帰り」を禁止している一方で、「リース切れの際にデータ入りのHDDをリース会社にそのまま渡してしまう」のはOK、という理屈は絶対通らないのだ。

 この問題は、ユーザーと情報機器普及企業双方に大いなる甘さがある、という事実に根っこがあると思っている。そしてそれは、表面的な情報化ばかりが進んでしまった日本社会の、根本的な問題なのではないか、と思う。

 使えるものは、欲しい人たちがドンドン回して使い倒す。着物、家具、鍋釜、紙・・・と、あらゆるものを使い回した江戸時代のエコ思想は、実はPCの世界でもそのまま通用している。HDDは、鍋釜でもあり水谷(みずや;食器棚)でもあるから、中身さえ取り除いておけば、次の人が思い通りに使える重宝な道具である。そんなツールを、あたかも情報の漏洩が起こる元凶のように捉える風潮は、いかがなものか。

 道具は、使うものがちゃんとしていれば、思っている以上に長生きする。長く使われる道具に魂が宿り、つくも神になる、なんて、想像するだけでもワクワクする。
ただし、IT機器がつくも神になったら、と想像すると、ちょっと人間はヤバイかも知れない・・・

 いずれにしても、データの管理こそ自己責任であって他人任せにしてはいけない、という原則さえ守れば、中古PCと記憶媒体、周辺機器などのセコハン世界を廃れさせる必要は全くない、と思う。いや、廃れさせるのは損失だ。

 今のうちに、全てのユーザーの意識を改革する必要がある。