理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

カフェイン

Mです。

むか~し むかし、男子学生Mは、左目を顕微鏡の接眼レンズに、右目をケント紙に振り分けて、ネズミの組織標本をスケッチしていた。夜も深まる中、組織学のレポートを仕上げていたのである。作業は3日目に入り、あと一歩なのだが、残り1日で仕上げるには眠る時間がとれそうにない。そんな夜の実験室に、先輩の一人が酒臭い息を吐きながらふらりとやってきて、「おお~、やってるねぇ。これ恒例の修行だよね。これ使う?」と、横文字のボトルを実験台に放った。「なんですか?これ。」「覚醒剤、って、ウソ。カフェイン錠。おれ要らないからやるよ。ま、がんばれやっ!」と出ていった。
↓ 現在ネットで買える米国製(超安価) 

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 それがカフェイン錠との出会いだった。もう、40年以上前の話だ。

高校の頃からインスタントコーヒー常用者だった。大学の実験室にもネスカフェの大瓶が置いてあって、同期の仲間と共同購入して飲み放題だった。カフェインのなんたるかは生物屋の学生なのだからそこそこ知ってはいる。でも、錠剤にお目にかかるのは初めてだった。いまでこそ、ドラッグストアだけでなくネットでも簡単に購入できてしまうが、当時は、どうだったのだろう。そもそも、先輩が放っていったのも米国製で、どこで買ったのかも解らなかった。ブランド名も覚えていないが、たぶん、教室の誰かが渡航の際に買ってきたのだろうと想像していた。
そのカフェイン錠が、見事に効いた! 
最後の夜は2錠で乗り切り、無事レポートは完成したのである。
適当にスケッチするのなら、そこまで時間はかからないのは解っていたが、どうも凝り性なところがあって、いわば趣味で時間をかけてしまっただけの話である。だからといって評価が高くなるわけでもなく、せいぜい、よくまあ細かく描いたなぁ、でおしまい。若気の至り、のひとつだった。

そのカフェイン錠は、1錠中のカフェイン量が200mgだったことだけは覚えている。コーヒーが全く効果無しの状態だったところで飲んだら、30分ほどで目が冴えてきて一気に頭スッキリになった。結局2錠飲んで、別に後遺症もなく過ごしたのだが、それ以後カフェイン錠を使うことはなく、残りの錠剤も先輩と同じく、後輩にポンと放って譲ったのである。

そんなことを思い出しながら、最近問題になっているエナジードリンクについて、結構ヤバイと感じた。かなりの量入っているカフェインの功罪を世の中がもっと認識しないといけない、と思うのである。
学習塾に通うこどもたち(中学生まで)が、何の気なしにシャッキリする、などとエナジードリンク類を安易に飲んでしまう状況は、どう考えてもマズイと思うのだ。

お茶やコーヒーにカフェインが含まれていて、覚醒作用をもたらすことは周知だ。そのカフェイン量は、コーヒーがカップ一杯(約200ml)でおよそ60mg、緑茶、紅茶はその5~6割といわれている。それらに比べ、エナジードリンク類は、ものによってコーヒーの4~5倍量が含まれているので、こどもが飲んだらあっという間に推奨上限をオーバーしてしまう。(下がカナダ保健省の数値)。大人も2本で推奨量を超えてしまうのだから、なかなかの含有量ということだ。致死量には遠いとはいえ、代謝も未熟なからだにとって良いはずはないのだ。

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Mは、毎日インスタントコーヒーをマグカップで5杯以上飲んでいる。ということは、カナダの推奨量からすれば明らかにオーバー。日本の厚生労働省は、基準値のようなものは自ら定めておらず、参考値として上表各機関などの数値を使って解説している。


 ↓ 厚生労働省のカフェインに関する説明は、下記のごとく
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html

 

過剰摂取で健康上の問題が発生する可能性があるのに厚生労働省があまり問題視していないのはどうなのか、という気もするが、じつは一方で、日本人は緑茶をよく飲む習慣があることから、カフェイン耐性が高いのだということが判っている。子どもの頃から食事のあとでお茶を一杯、なんていうのがむかしからの習慣だった人も多いのではないか。事実、Mは小さな頃からお茶だけはたくさん飲んでいた。それが要因で、日本人はカフェインに耐性が高いのだそうだ。上表にある大人の一日推奨量がコーヒー3杯となっているのも、西欧人の例であって、この量を超えるとめまいを感じる人もいるのだそうだ。これまでの日本人には、まずそういう人はいないのだという。カフェインに対する感受性は個人差が大きく、厚生労働省が厳格な物言いをしないのも、そこに要因があるらしい。現に5杯立て続けに飲んでもなんにも変化のないMの様な者も、確かにいるのである。

ただ、今の日本はMが育った頃とは大違いである。飲み物は豊富。種類もめちゃくちゃ多い。それらの中にどれだけのカフェインが含まれているのか、と考えると、耐性が低いこどもたちの飲み物について、よく観ておかなくてはいけないと思う。

バブル全盛期に、当時の三共製薬さんが売りまくった「黄色と黒は勇気のしるし、24時間働けますかぁ~♪」と時任三郎さんがCMで胸を張っていたRegainがまさにそうだが、ほとんどのドリンク剤は1本あたり50mgのカフェインを含んでいる。これは、コーヒーカップ1杯分に近い。子供用ドリンク剤にはもちろん含まれていないものの、学習塾通いでドリンク剤に慣れたこどもたちが中学、高校と進む頃に、なんの抵抗もなく大人用に移行するのは避けられないだろう。耐性の個人差が大きいということは、みんなと同じように飲んでいても、具合が悪くなってしまうこどもも現れるということだ。たいていは大丈夫だから、ということで良しとするものではないのだ。

カフェインが効かないことを自認しているMだが、孫が安易に飲んでしまわないように気を付けていないと、普通の飲み物に実は入っていた、なんてことになりかねない。
これからしばらくは、飲料の表示をしっかり見る習慣を付けたいと思っている。