理系夫婦Y子とMの昭和から令和まで

都内で働く薬剤師Y子と、パソコン・DIY・生物などに詳しい理系の夫M。昭和30年代から今日までの実体験に最新の情報を加え、多くの方々、特に子育て・孫育て世代の皆様のお役に立つことを願いつつ発信する夫婦(めおと)ブログです。

顔の左右対称性 おもしろ画像イタズラ

Mです。

 人の顔。二つの目がほぼ同じ高さに鼻を境に左右にくっついているのだが、実際には、それほど左右対称ではない。大きさが違うこともあれば、位置が上下にちょっとだけずれていたりする。鼻だって、まっすぐとは限らない。右に曲がっている人もいれば逆もある。口だって、左右で口角の位置が上下にずれていたり、距離が違っていることもある。そんな微妙な差をひっくるめて、人は他人の顔を眺めているわけだ。
 造形の世界では、人体のパーツ構成に対して”黄金比”なる比率を言い、ビーナス像やダビデ像はその比率になっているのだ、などと聞くけれど、顔の構造だけについてそんなことは聞いたことがない。とはいえ、世界の美女100選とか、顔の造形についての論評も沢山あるわけで、美しい顔のイメージが、各自の脳の中のどこかにできあがっているのだろう。そしてただ一つ思うのは、左右対称性の高い顔の方が、顔の造作イメージとしては「良」ととらえられている気がする、ということだ。

 そんなことを思いながら、月一回通う歯医者さんの待合室で、不思議な現象に気づいてしまった。
 待合室の一番奥に座ると、入口方面を観ることになる。左の壁は一面の鏡になっている。入り口側の壁面は玄関口があるので狭く50cmほどしかない。そこに、ホワイトニングを勧めるポスターがあって、にっこりと笑うお嬢さんが正面を向いている。すぐ左側が鏡なので、壁の端を対称線にして左右反転したポスターが左壁の鏡の中に見えている。この状態で、実に面白いことが起こったのである。

 ここでちょっとだけ、予備情報として補足しておかなければならない。
 以前、ステレオ写真について取り上げたことがある。

www.yakuzaishi-y-co.work

 左右の目の視差を利用して立体映像を観せる仕掛けがステレオ画像なのだが、それに凝ってだいぶ立体視の練習をしてきたMは、道具を使わなくても左右二つの映像を視野の真ん中で合成することが得意である。

 何の気なしに、Mはホワイトニングお嬢さんのポスターでこれを試していた。ちょうどやりやすい位置に、鏡像関係の画像が見えてしまっていたのである。
 そして、やってみたところ・・・
  なんと、鏡で反転している女性の顔が、真ん中で元の画像とほとんど差異なく重なってしまった気がしたのだ。感覚としては、反転映像が完全合致した、という印象だったのである。
 本当に、左右対称の顔なのか!?
 思わず、ガラケーで写真を撮って持ち帰り、PCに取り込んで画像比較してみようと考えたのだった。

 ところが残念なことに、持ち帰ったガラケー画像データは、画素数不足でとても比較に耐える画質ではなかった。無念!
 でもMはあきらめない。
 ガラケー画像にあるポスターの文字情報を元に、ネット検索した結果、ようやく元の画像を見つけ出したのである。それが下のお嬢さん。

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 うーん、確かに鼻の中心線を対称に、左右が揃っている気がする。これなら、鏡に映っていた画像を重ね合わせても違和感がない感じだ。
 そこで、イタズラしてみることにした。この画像を縦に分け、右側成分で作った顔と、左側成分だけで作った顔にして、並べてみようと思ったのだ。その結果が下の2枚である。
左が右成分×2、右が左成分×2、の結果だ。

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  あれれっ! だいぶ違うじゃん!?
  結果は、最初に思ったのとはだいぶ違っていた。右成分だけだと結構強そうな印象の顔になり、左成分だけだとほんわか優しい雰囲気になった。確かに、目の位置などに大きな差がないので、左右対称性の高い顔立ちであることは間違いないが、受ける印象は大きく違ってきたのが驚きだったし、とても面白い。
 人が捉えている顔の印象というのは、やはりパーツで観ているわけではなくて全体をまとめて捉えているのだというのがよくわかった。

 そういえば、中学の頃に百科事典か何かで人の顔の対称性について論じているものを読んだ。そのなかで、人の顔は左右でかなり差があり、どちらか一方の面だけでは全く違う人相になってしまう、という記述があった。例として、故 八千草薫さんの正面写真を題材に、左右2分割画像にして反面ごとに鏡像との合成写真にしたものが載っていた。彼女の場合、最初から左右対称ではない、と感じる顔立ちなのでその差は当たり前だろう、くらいに思っていた。たしかに、本当に別人のように見えたから。
 それに比べると上の女性ははるかに対称性が高いと思っていたのに、それでさえ、片側合成の顔だと本来の顔とだいぶ違う印象になってしまうのだと知って、人の感覚なんて大して当てにはならないものだと痛感したのだった。

 熟練の刑事さんは、指名手配者を見分けるために、顔を見ているのではないだそうだ。目つきだけで判別するのだそうである。顔は、化粧したりひげをつけたりすれば全く異なった印象になってしまうが、目つきの印象だけはたとえ整形しても元の印象を保っているのだ、という。目の形、ではなくて目つき、というところに意味があるのかも知れない。素人には、ほんとかねぇ、としか思えないのだが・・・

 イタズラついでに、動物の顔で片側合成を試してみた。体毛の形や模様が違うとダメなので、ライオンの雌で正面を向いている映像を選んでみた。
 結果は、下のごとく。

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       右反面合成              左反面合成

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 これはびっくり、驚くほど差がない!、と感じる。この個体だけなのだろうか?

それとも、ライオンの顔について、見るべき差を捉えられていないだけなのだろうか?

 人の顔は、脳容積が大きくなってしまったため、解剖学的に見たとき、そのしわ寄せで顔面にゆがみが生じやすいと言われている。とすると、そのゆがみこそが、人の顔の造形を面白くしている要因だ、と捉えても良いだろう。結果として、人間たちは、いろいろにゆがんだ造形のなかから、各人が好みの顔を探していくことになる。

 結果として、人間社会では、ゆがみバンザイ、なのかも知れない。